【No.445】医療の質、低下の危機 |国立感染症研究所 国際協力室長  谷 伸悦氏|
2010.04.01

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J.I.メールニュースNo.445 2010.04.01 発行
「医療の質、低下の危機」
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◆◇ 目 次 ◇◆
【1】 「医療の質、低下の危機」‐診療報酬制度の抱える問題‐
国立感染症研究所 国際協力室長  谷伸悦
【2】 自由民主党無駄撲滅プロジェクトチーム 「政策棚卸し・事業仕分け」を実施

【3】 第153回J.I.フォーラムのご案内 4月28日

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【1】 「医療の質、低下の危機」‐診療報酬制度の抱える問題‐
国立感染症研究所 国際協力室長  谷伸悦
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「悪貨は良貨を駆逐する」で知られる『グレシャムの法則』は、貨幣流通だけ
でなく現在の日本の医療が抱える問題を考えるものさしにもなるのではないか。
日本の医療は、全国どこに行っても同様の行為は同一評価とする診療報酬という
制度で評価が行われている。診療内容の質を評価するのではなく、どのような診
療をしたかという点だけが評価の対象となる。現在の日本の医療の現場では、診
療報酬評価と実際の診療内容の質との乖離が起きてしまっている。そのため次の
ような問題が発生する。
診療行為が同一であれば、コストを最小にすること、つまり診療内容の質を落と
すことで、得られる利益は大きくなる。診療報酬の不正請求といった事件が象徴
的だが、金銭的な利益を求めコストを下げるために診療内容の質を低下させたり、
偽ったりしてしまう事態が起こっている。
また一方で、産婦人科及び小児科若しくは急性期診療を行う病院では、逆の事態
が発生している。これらの病院では評価の基準が金銭ではなく人命に置かれる。
人命を最優先すれば、医療においては常に付きまとう微細なリスク ―例えば、平
凡な疾患に対する投薬など― にもそなえてコストをかける必要が生じる。そのた
め、診療報酬評価を診療内容の質が上回ってしまう。
質の低い医療を提供すれば儲かり、質の高い医療を提供すれば経営が厳しくなって
しまう。このような状況では長期的に見たときに日本の医療の質の低下は免れない
のではないだろうか。このような「正直者が馬鹿を見る」状況を改善するためにも、
医療の適正な評価を行う仕組みの構築が重要である。
例えば、広島県の尾道市では地域の診療所と病院が其々の役割分担を理解し、地元
の病院の医師不足等に際して開業医達が実際に病院の勤務医となり実質的に支えて
いる。経済的な基盤ではなく人命尊重を基盤とし、関係者が歩み寄り連携し合える
ような仕組みの事例を地域医療の参考にしていきたい。

*谷伸悦氏のプロフィール
昭和44年、香川県生まれ。平成8年に厚生省(厚生労働省)に入省し健康政策局(現医
政局)、秋田県、厚生労働省保険局、同省保険局、国立長寿医療センターを経て現職。

【2】 自由民主党無駄撲滅プロジェクトチーム、「政策棚卸し・事業仕分け」を実施
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2008年8月から他党に先駆けて中央省庁の事業仕分けに取り組んできた自由民主党無駄
遣い撲滅プロジェクトチーム(座長:河野太郎衆議院議員、以下“ムダボPT”)が、
4月5日(月)、6日(火)に今年初めての「政策棚卸し・事業仕分け」を実施します。
今回は、子ども手当てや農家への戸別所得補償制度など、今年度から始まる新規事業
について、事業そのものの是非に関する政策議論を行う「政策棚卸し」が中心となり
ます。しかし併せて、沖縄科学技術大学院大学開校に関わる経費など、従来から続い
ている事業についての「事業仕分け」も実施されます。
構想日本にとって、2008年のムダボPTの事業仕分けで培ったノウハウが、昨年11月に
政府が行った事業仕分けの実施に際して大いに役立ちました。構想日本は、社会の利
益になることなら党派の隔てなく協力する立場であるため、今回もこの既存事業の事
業仕分けについてムダボPTに協力しています。
当日はインターネットでの同時配信も行います。開催場所や当日のスケジュールなど、
詳しくは以下の自由民主党ホームページをご覧ください。
http://www.jimin.jp/jimin/info/zeikin-voice/index.html

【3】 第153回J.I.フォーラムのご案内
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「景観問題を考える」

景観問題に取り組んできた方達の具体的な事例から、背景に横たわる問題を探り、
問題の可視化を試みます。
≪開催概要≫
○日 時:平成22年4月28日(水)18:30~20:30
○会 場:日本財団ビル2階 大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111(代)
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html
詳細は随時以下のページでお知らせいたします。
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