【No.523】シノイキスモス(集住)のススメ |大阪大学大学院人間科学研究科 助教  久保田 裕之氏|
2011.10.16

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J.I.メールニュースNo.523 2011.10.06発行

シノイキスモス(集住)のススメ

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【1】 シノイキスモス(集住)のススメ
大阪大学大学院人間科学研究科 助教 久保田 裕之

【2】 第170回J.I.フォーラム 10月27日(木)開催 (※日付変更)

【3】 事業仕分け 次回は10月8日、9日、12日、4つの自治体で実施!

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【1】 シノイキスモス(集住)のススメ
大阪大学大学院人間科学研究科 助教 久保田 裕之

弱冠25歳で独立間もない合衆国を訪れ、後に『アメリカのデモクラシー』
を記したA・トクヴィルは、アメリカの住民自治の伝統を「自由の小学
校」に喩えたことで有名である。彼は次のように述べている。

「この制度(=住民自治)によって、自由は人民の手の届くところにお
かれる。それによって人民は自由の穏当な行使の味を知り、自由の利用
に慣れる」

トクヴィルは連邦や州レベルの大規模な自治ではなく、より身近な住民
自治の中にこそ、民主的な「自由の精神」の涵養を見てとったのである。

翻って、現代の日本に生きる私たちは、いったいいつ、どこで、こうし
た市民としての訓練の機会を持つだろうか。商品経済と行政機構の発達
により、今では隣近所と一切顔を合わせなくとも、家族だけでも、たっ
た一人でも、(金さえあれば)何不自由なく生活できるようになった。

代わりに、私たちが失ったものは何だろうか。ある人は「心のゆたかさ」
や「思いやり」だと言い、またある人は「つながり」や「絆」だと言う。
しかし、より本質的には、利害の異なる他人との具体的な衝突の機会で
あり、それでも譲歩し妥協しながら生活を共にしていく民主的な訓練の
機会ではなかったか。

とりわけ現代では、かつてのように伝統や権威に訴えるのではなく、年
齢も職業も立場も異なる多様だが対等な市民の間で議論し妥協し意志決
定を行うという、より高度な訓練が求められている。おそらく市区町村
よりももっと身近な「手の届く」レベルで、自分の意志が共同生活に反
映されることの「味を知り」、自分たちの生活を自分たちで運営するこ
とに「慣れる」ためには、どのような制度的下支えが可能かを考えてい
かなければならない。

私は長らく、近年日本でも注目される「コレクティブハウス」や「シェ
アハウス」といった、家族を超えて他人と共に暮らす共同生活実践の調
査研究を行ってきた。複数の家族が中庭やキッチン・リビングを共用す
るものから、男女を問わず独身者が集まり住まうものまで、その形態も、
生活の共同度合いも様々である。欧米では長い歴史と伝統を持つこうし
た他人との共同生活の中に、何かヒントを探すことはできないかという
思いがある。

たとえば日本では、親元で暮らすか結婚して夫婦で暮らすのでなければ、
どれほど高くてもどれほど狭くても一人で暮らす方がましだと考えられ
てきた。しかし、たった一人の高価で非効率な生活しか選択肢がない状
況は、一方では高齢化に伴う高齢者単身世帯の急増問題として、他方で
は景気後退に伴い住む場所を失う若年ホームレス問題として、人々の生
活を脅かしている。

そもそも、なぜ日本では、結婚という形でしか他人と助け合い生活する
ことができないのか。このことは、家族を超える他人との民主的協働を
困難にしている原因と、根を同じくしているように思えてならない。

古代ギリシアの人々が、部族を超えて集まり暮らし始めたこと(=シノ
イキスモス)が人類史における最初の民主主義をもたらしたように、人
はなぜ集まり住まうのかという最も原始的な議論から、民主主義を問い
直していく必要があるだろう。

正直なところ、孤立して互いを疎み合う市民に、「自由の小学校」を持
たない国民に、より大きなレベルの自治が可能とは考えにくいからであ
る。

久保田 裕之(くぼた・ひろゆき)
1976年群馬県桐生市生。専門は家族社会学、福祉社会論、政治哲学。シ
ェアハウスなど非家族的共同生活実践のフィールドワークを元に、家族、
ケア、共同性、公私二元論に関する理論的考察を行う。著書に『他人と
暮らす若者たち』(集英社新書)、共著に牟田和恵編『家族を超える社
会学』(新曜社)など、共訳書として、エヴァ・キテイ著『愛の労働あ
るいは依存とケアの正義論』(白澤社)などがある。
Blog: http://www.synoikismos.net/blog/

【2】 第170回J.I.フォーラム 10月27日(木)開催 (※日付変更)
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「事業仕分け」から政治改革は始まっている!!

事業仕分けがその後どうなっているのかご存じですか?マスメディア
は興味本位の断片的な報道しかしません。しかし、国は全事業(約5000)
の説明シートを10月中に公表します。これで国民が国の事業を監視で
きるようになりました。国会でも若手議員が立ち上がりました。決算
行政監視委員会で仕分けを始めるのです。国際的にも、OECDから説明
依頼がくるなど注目されています。自治体ではさらに広く深く(今年
は33自治体、通算では85自治体130回)進行中です。ここから政治が
どう変わるか、気鋭の議員と政治学の重鎮に語って頂きます。

○日時: 平成23年10月27日(木)
※日付が変更になりました。

○会場: 日本財団ビル2階・大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html
※会場のセキュリティの都合上、本案内状を会場1階で提出してください。

○開演: 午後6時30分(開場:午後6時00分)

○ゲスト: 佐々木 毅(学習院大学法学部教授)
階 猛  (衆議院議員/民主党)
平 将明 (衆議院議員/自民党)

コーディネーター:加藤 秀樹 (構想日本 代表)

○定員: 160名

○フォーラム参加費: 2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)

○懇親会参加費: 4,000円(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
※懇親会をキャンセルされる場合は必ずご連絡くださいますようお願いいたします。
懇親会直前キャンセルの場合は、キャンセル料を申し受けます。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」 港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
(http://www.iwaen.co.jp/tameike)

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参加ご希望の方は、【10月26日まで】に出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
※懇親会直前キャンセルの場合は、キャンセル料を申し受けます。

——————————————————————–
*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田陽光まで。TEL 03-5275-5607
*今後の開催予定日: 11月30日、12月21日
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【3】 事業仕分け 次回は10月8日、9日、12日、4つの自治体で実施!
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つくばみらい市◆
日にち: 10/8(土)
会 場 : 谷和原(やわら)公民館
お問い合わせ先: 企画政策課(伊奈庁舎)0297-58-2111

都留市(4)
日にち: 10/8(土)
会 場 : 都留市役所3階 大会議室
お問い合わせ先: 政策形成課企画担当 0554-43-1111 内線241

田川市
日にち: 10/8(土)、9(日)
会 場 : 田川市役所1階 大会議室
お問い合わせ先: 行政改革推進室 0947-44-2000 内線323

京都府(4)(議会会派主催)
日にち: 10/12(水)
会 場 : 京都ガーデンパレス 2階
お問い合わせ先:民主党京都府議会議員団 中小路 075-414-5570

※◆の付いている自治体は、仕分け人の議論に基づいて市民が判定を
する「市民判定人方式」での実施。
※( )内の数字は実施回数。

*今後のスケジュールなど、詳しくは構想日本HPをご覧ください。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/shiwake/contribution/index.php

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