【No.553】「人・農地プラン」の論点 |東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授  安藤 光義氏|
2012.05.17

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J.I.メールニュース No.553 2012.05.17発行

「人・農地プラン」の論点

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【1】 「人・農地プラン」の論点
東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授 安藤 光義

【2】 第177回J.I.フォーラム 5月30日(水)開催

【3】 ホームページ更新情報
インドネシア国会で「事業仕分け」研修会実施!

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【1】 「人・農地プラン」の論点
東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授 安藤 光義
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地域農業は高齢化、後継者不足など多くの課題を抱えている。その
ような中、農業改革を進めるための「人・農地プラン」が発表され
た。地域の合意に基づいて農地集積を進めようというのがその趣旨
である。農地の貸し手や新規就農者に補助金を出すという措置も講
ぜられる。だが、このプランが遂行される農村の現場は困難な状況
に置かれている。それは「農地集積推進の場」と「社会的結束の場」
の乖離という問題である。

これまでこの2つの役割を果たしてきたのが集落である。かつては
農家小組合と呼ばれ、現在は生産(実行)組合と呼ばれている。農
村社会・農業構造の変化によって、これまでのような役割・機能を
集落に期待できなくなっているからである。

兼業化・混住化・異質化による集落の結束の弱体化に対しては、既
に「80年代の農政の基本方向」で農業集落排水事業による共同利益
の誘導、土地改良事業の創設換地や各種補助事業を活用した生活施
設整備によって梃入れが図られたし、最近では農地・水保全管理支
払交付金による社会関係資本の再構築が進められてきた。しかし、
これは「暮らし」に網をかけた合意形成であり、直接的に「農地」
を動かすためのものではない。集落の結束力と農業者の「選別」の
間には「溝」が存在している。農用地利用改善団体が機能しなかっ
たのはこのためである。だが、集落レベルでプランを策定しない限
り、農地流動化のための詳細な計画は作れない。これが第1の古く
て新しい問題である。

仮に集落レベルの合意が整ったとしても、担い手農家にとって集落
は「農地集積推進の場」足り得ない。一般的な集落の農地面積は20
~30haだが、これでは規模拡大を目指す農家にとっては狭すぎる。
そのため担い手農家の多くは複数の集落で農地を借りており、集落
合意だけでは構造政策は十分機能しないのである。となるとプラン
は勢い市町村単位となる。これは認定農業者制度(市町村が定める
基本計画に担い手が位置づけられ、各種の施策が実施される)と整
合的で、今回の無利子融資、青年就農給付金といった施策はこの延
長線上にある。だが、これだと集落合意は疎かになり、実効性のあ
る農地集積は難しくなる。これが第2の新しい問題である。

「人・農地プラン」はこうした問題を整序せずに現場に丸投げをし
た。「社会的結束の場」としての集落を活用しなければ前に進めな
いにもかかわらず、実際の「農地集積推進の場」は集落には収まら
ず、はるかに広域な単位を必要としている。この複雑な問題は拙速
な政策に起因するというより、農村の社会構造が大きな転換点を迎
えている結果とみるべきだろう。プランの成否に拘泥せず、この政
策を通じて現場の情報を収集し、正確な「構造」の把握に徹するこ
とを望みたい。

安藤 光義(あんどう・みつよし)
専門は農業政策、農地制度。農村の現場で政策がどのように捉えら
れ、実施されているのかを実態調査を通じて明らかにし、その問題
点を把握し、政策の改善に繋げる研究を行っている。

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【2】 第177回J.I.フォーラム 5月30日(水)開催
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「仕分けで政治の再生を」
-世界が注目する仕分けの使い方-

日本のマスメディアが飽きてきた事業仕分けに海外から熱い視線が
注がれ始めました。OECDの会議での発表、インドネシア上院での研
修会開催など。この背景には、日本に限らず、多くの国における、
民意を反映できない政治の機能不全があります。事業仕分けのミソ
は「全面公開」と「外部の目」です。これは民主主義の原点でもあ
ります。この二大要素が、事業の削減ということに限らず、政治全
般を住民、国民の側に引き戻し、再活性化し、併せてポピュリズム
を防ぐのです。地方自治体では継続的に浸透し、実施は140回を越
え、「市民判定人」などの進化もみられます。仕分け手法で日本の
政治を生き返らせましょう。

○日時: 平成24年5月30日(水)

○会場: 日本財団ビル2階・大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html
※セキュリティの都合上、本案内状を会場1階で提出して下さい。

○開演: 午後6時30分(開場:午後6時00分)

○ゲスト: 河野 太郎(衆議院議員/自民党)
蓮 舫(参議院議員/民主党)

コーディネーター: 加藤 秀樹(構想日本 代表)

○主催: 構想日本

○定員: 160名

○フォーラム参加費: 2000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)

○懇親会参加費: 4000円
ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」
港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
http://www.iwaen.co.jp/tameike

※懇親会をキャンセルされる場合は必ずご連絡下さい。
直前のキャンセルの場合、キャンセル料を申し受けます。

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参加ご希望の方は、【5月29日(火)まで】に出欠の是非を、下記の
メールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
※懇親会直前キャンセルの場合は、キャンセル料を申し受けます。

—————————————————————-
*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田陽光まで。TEL 03-5275-5607
*今後のスケジュール等、詳細はHPをご覧下さい。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php
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【3】 ホームページ更新情報
インドネシア国会で「事業仕分け」研修会実施!
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○<インドネシア仕分けセミナー>現地リポート更新中!

事業仕分けの核である「公開性」や「外部性」がインドネシア議
会の議員の関心を強く惹き、インドネシア議会で財務省の官僚な
ども交えた事業仕分けの研修会が開かれることになりました。
現地入りしているスタッフからのレポートを更新しています!

https://www.kosonippon.org/wp-manager/shiwake/municipality_sort/detail.php?m_project_cd=1052

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