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【No.586】「フリーハンドではない」ことが生み出す力 ― 今や、実用でなくなった「刺し」をなぜ作り続けるのか ―

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J.I.メールニュース No.586 2013.01.17発行

「フリーハンドではない」ことが生み出す力
― 今や、実用でなくなった「刺し」をなぜ作り続けるのか ―

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【1】「フリーハンドではない」ことが生み出す力
― 今や、実用でなくなった「刺し」をなぜ作り続けるのか ―
天羽 やよい

【2】 第185回J.I.フォーラム 1月21日(月)開催

【3】 生き抜く東北の職人技「東北の手仕事」展

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【1】「フリーハンドではない」ことが生み出す力
― 今や、実用でなくなった「刺し」をなぜ作り続けるのか ―
天羽 やよい
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南部菱刺は二百年余り前の藩政時代から、青森県南部の三戸、
五戸、八戸、上北町などの農家の女性たちによって刺し継が
れてきました。この地域は寒冷の上、海からの風であるヤマ
セも吹き、綿花は育たず、日本海を交易する北前船によって
京、大阪から入ってくる古手木綿の量も少く、農民には木綿
の着物の着用が許されなかったのです。

農家の女性たちは麻の種を播き、糸を紡み、布を織り、防寒
と補強のため、麻布に木綿糸を刺し込んでいきました。ほと
んど五年おきにやってくる飢饉で子供に先立たれたり、餓死
なども珍しいことではなかったと思われる暮らしの中で、女
性たちは家族にできる限り暖かい衣類を着せようと必死に織
り、刺したはずです。そんな厳しい生活でありながら古作に
は刺すことの喜びや自分を表現できることの嬉しさなどがい
きいきと感じられるのです。

明治中期の鉄道開通によって木綿が入り、大正時代には色毛
糸が入ってきました。三幅前掛がこの色毛糸で鮮やかに刺さ
れたこのころが菱刺の華やかな時代であり、又、衰退の始ま
りでもありました。物資が豊富に出回るようになり、女性た
は織りや刺しから少しずつ開放されていったのです。

昭和初期の民藝運動で、津軽こぎん、南部菱刺は高く評価さ
れ、見直されるきっかけになりました。昭和中ごろには長年
郷土の民俗学を研究されている田中忠三郎氏によって菱模様
を体系化しようという動きが始まりました。村落を訪ね歩い
て古作を捜し、そこに刺し込まれた模様を拾いあげ、紙に起
こしていくという仕事が、昭和五十二年「南部つづれ菱ざし
模様集」に結実しました。

女性がどうしてもやらなければならない仕事としての菱刺は
なくなりました。これは幸せなことですが、歴史ある文化と
いう視点から、もう一度私たちの暮らしの中にいきいきと蘇
るには何をどう作るべきか、刺し手は問われています。

「刺し」ということ   ———————————-

「保温と補強」という必要性をなくした南部菱刺しの存続の
意味を考えながらも、刺し続けているのはどうしてなのか。
長年感じてきた「刺し」がもっている力についてお話しして
みたいと思います。

総刺ししたものをごらんになったときどんな印象を受けられ
たでしょうか。目が疲れそうとか、肩がこりそう―と、余り
楽しいものではないかもしれません。刺している姿も下を向
きっぱなしですし、一日いっぱい刺したからといって「ヤッ
ター!」と喜べるような成果もなく、とても地味なものです。
でも、刺している本人は広がりのなかにいて清々しい気分な
んです。

「刺し」には不思議な力があります。

よこ糸に添って毎段糸を刺し込んでいくという行為には「自分」
が出てくる余地がありません。針をもつ前に模様を決め、布
と糸の色を決めたら、あとは決めた模様をただ運針していく
だけだからです。「フリーハンドではない」ことが重要だと
感じます。

病気や人間関係、さまざまな事情。だれでも多かれ少なかれ抱
えていますが、そのとき最終的に一番の問題になるのは「自分」
ではないでしょうか。普通の暮らしのなかで「自分」という執
着から離れるのは、とても難しいことです。

布目を追い続けていると、やがて体のなかがしーんとしてきます。
そして、清々しい場所に立たせていただいていると実感します。
このように書くと、おおげさなとか、毎日やっている人だから―
といわれそうです。でも。何回か体験教室を開いたことがあり
ます。菱刺しの針をもつのは初めてという人ばかりでしたが、
布と針を手にすると、どの会場でも私語がなくなって静まりか
えり、布目を数えることにみなさんがすっと集中していきました。

「自分」の出る幕がない、広びろとした場所に連れていってくれる、
それが「刺し」の力だと思います。気持ちのいいこの場所に居続け
たくて針仕事が苦手なのに飽きもせず針をもち続けているのかも
しれません。

*天羽やよいさんの作品展が開催中です。(詳細は【3】でご紹介します)

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【2】 第185回J.I.フォーラム 1月21日(月)開催予定

震災後2年目のフクシマ -それでも「までい」に生きる-
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○ 日時    :平成25年1月21日(月)
午後6時30分~午後8時30分(開場:午後6時00分)

※以前お伝えしていた日程から変更になりましたのでご注意下さい。

○ 会場: 日本財団ビル2F 大会議室
港区赤坂1丁目2番2号 TEL : 03-6229-5111
(http://www.nippon-foundation.or.jp/about/access/)

○ゲスト(予定): 菅野典雄(福島県飯舘村 村長)
たくきよしみつ(鐸木能光)(作家)

コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本 代表)

○主催: 構想日本

○フォーラム参加費:2,000円 (シンクネット構想日本会員は無料です)

○懇親会参加費:4,000円程度 (参加希望の方のみ)
ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催する予定です。

「頤和園(いわえん)溜池山王店」
港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
(http://www.iwaen.co.jp/tameike/)

交通のご案内(頤和園)
http://www.iwaen.co.jp/tameike/map.html

※ 懇親会をキャンセルされる場合は必ずご連絡下さい。
直前のキャンセルの場合、キャンセル料を申し受けます。

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参加ご希望の方は、【1月21日(月)午後1時まで】に出欠の是非を、
下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
※懇親会直前キャンセルの場合は、キャンセル料を申し受けます。

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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田陽光まで。TEL 03-5275-5607
*今後のスケジュール等、詳細はHPをご覧下さい。
http://www.kosonippon.org/forum/index.php
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【3】生き抜く東北の職人技「東北の手仕事」展
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【1】でご紹介した天羽やよいさんの作品をご覧頂けます。
皆様、是非ご来場下さい。

○ 日時    :平成25年1月11日(金) ~1月27日(日)
午前11時00分~午後7時00分

○ 会場:蔦サロン
港区南青山5-11-20 TEL: 03-3409-8645
(http://kimono.yuzuriha.jp/)

○ アクセス:表参道駅 B3出口 徒歩5分
(http://www.yuzuriha.jp/exhb/2013.01.11tokyo-tuta/2013.01.11%20tokyo-tuta.htm)

○実演&トーク:平成25年1月20日(日)午後1時~(約90分)
天羽やよい(刺し子職人)
田中陽子(暮らしのクラフトゆずりは 店主)

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