【No.59】20年たったら大穴!? 道路公団など特殊法人問題と同じ
2002.08.09

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20年たったら大穴!? 道路公団など特殊法人問題と同じ
JIニュースNo.59  2002.8.9
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■■ 目次 ■■
1.《政策ラウンジ》20年たったら大穴!? 道路公団など特殊法人問題
と同じ
-国民にはリスクだけ転嫁され、メリットなし-
2.《7月30日第61回「JIフォーラム」の報告》
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1.《政策ラウンジ》20年たったら大穴!? 道路公団など特殊法人問題
と同じ
-国民にはリスクだけ転嫁され、メリットなし-
旧年金福祉事業団から公的年金の自主運用を引き継いだ年金資金運用
基金(特殊法人)の平成13年度決算が発表された。13年度1年間の赤字
は、約1兆3千億円であり、累積赤字は3兆円を超えたという。これは、
同基金が約40兆円を運用した結果である(うち約25%を国内株式へ投
資)。

今後、財政投融資の改革により、自主運用額が毎年増大し、いずれ
150兆円を超える公的年金積立金を、市場運用することになっている。
乱暴な計算であるが、40兆円の運用で3兆円の赤字なら、150兆円では
12兆円近くの赤字となる。
一体、何のためにこのような運用を行うのだろうか。
公的年金の積立金は、国民から強制徴収された保険料が原資である。
それは、実質的に税金と同じだ。税金が、マーケットで株式等で運用さ
れていることになる。厚生労働省は、自主運用により高い収益を上げ、
保険料負担を軽減できるといっているが、いかなる根拠に基づきそのよ
うなことが言えるのだろうか。

そもそも、自主運用は矛盾だらけの仕組みである。第1に、実質的に
公務員と同じ身分保障の下にある職員が、優勝劣敗のマーケットで勝て
る道理がない。現実のマーケットの参加者は、勝てば数億の報酬が得ら
れる一方、負ければ退場させられる。勝っても負けても、決まった報酬
が支払われる公務員に運用などできるわけがない。

第2に、政府の代理機関である特殊法人がマーケットに参入するのは、
レギュレーター(規制監督者)がプレーヤーになるようなものである。
また、株式の保有を通じて、政府が株式会社に影響力を行使することに
なる。逆に、もし、政府だから影響力を及ぼすべきではないとすれば、
株主が議決権を行使しないことになる。これでは、コーポ-レート・ガ
バナンスが働かなくなってしまう。
第3に、リスクの許容範囲が全く不明である。同基金のポートフォリ
オ(金融資産の組合せ)は、4%の予定利率を達成するため作られている
が、これは、株式や債券の過去の収益率と変動率等を使って計算してい
るに過ぎない。過去のデータをいくら使っても将来の安全運用の保障は
全くない。
同基金の運用のポリシーは、株式は長期で運用すれば儲かるという極
めて稚拙なものであり、それは、運用というよりは、「ギャンブル」だ。
年金の運用は、負債サイドからリスク許容度を計算して行うのがイロハ
であるが、公的年金は数百兆円の債務超過であり、リスクなど1円も取
れないのだ。もし、リスクをとるなら、それは直ちに保険料の引上げを
意味する。
国民が、保険料引上げも覚悟した上で「ギャンブル」で一攫千金を当
てることに納得していれば良いが、はたしてそうだろうか。
このまま放っておくと、同基金は、“負け”を取り戻すべく、掛け金
を倍々にして「ルーレット」を行うだろう。長期運用と言っておけば、
20年後の結果については、誰も運用責任をとらなくてすむ。

自主運用は制度の改悪であり、被保険者に対する背任行為だ。同基金
の前身である年金福祉事業団の時代から十数年間運用して、国債の金利
さえ稼げなかったのが実態である。逆にいえば、初めから100%国債で
運用していれば、3兆円の赤字など生み出さず、また無駄な公務員を雇
う必要もなく、金融機関に毎年数百億円の手数料も払う必要もなかった。
もとを正せば、マーケットで資金を運用することなど、政府が行うべ
き仕事ではない。
構想日本は、2年前、この年金資金運用基金の設置法が国会で審議さ
れる際に、自主運用の危険性を主張し、その導入に反対した。今からで
も決して遅くはない。損失が増大し、国民負担となる前に、一刻も早く
運用基金を廃止すべきである。
小泉総理は、道路関係4公団の改革には熱心であるが、それ以上に運
用基金の廃止を決断すべきである。公的年金の自主運用は、保険料の軽
減どころか、国民に更なる負担増をもたらすだけだ。
(文責:「年金」プロジェクト担当 松永 誠一)
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2.《7月30日第61回「JIフォーラム」の報告》

たて続く外務省の不祥事。「外務省改革」は、これからが本番です。
本当に議論すべきは、外務省の”お行儀改革”ではなく、「外交改革」
(日本外交を立て直すためには、どういう機能や仕組みが必要か)で
す。外務省だけが外交を担う時代ではない今、外交を担う仕組み全体
のあり方を考えることが不可欠です。
「変える会」のメンバーの他、現役外交官の方などをお迎えし、外
務省だけの問題でなく、外交の能力を向上させるにはどうしたらいい
のかといった行政のあり方にまで踏み込んだ議論が交わされ、この続
きとして、「国益」について議論しようという提案もありました。
<討論者>
武見 敬三(参議院議員)
達増 拓也(衆議院議員)
中村 仁威(外務省総合外交政策局課長補佐)
波多野 敬雄(財団法人フォーリン・プレスセンター理事長)
林 芳正(参議院議員)
船橋 洋一(朝日新聞特別編集委員)
※当日の議事録は、後日ホームページにて公開致します。当日の模様
を収録したビデオは1本3000円にて販売いたしております(お問い合
わせは info@kosonippon.org までお願いします)。

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