メールマガジン

【No.684】「監視と集計のあいだ:プライバシーの社会的側面」

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J.I.メールニュース No.684 2014.12.11発行

「監視と集計のあいだ:プライバシーの社会的側面」

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【1】<巻頭寄稿文>

「監視と集計のあいだ:プライバシーの社会的側面」

名古屋大学大学院法学研究科 教授 大屋 雄裕

【2】<お知らせ>

(1)第207回J.I.フォーラム  12月24日 開催

「人口減少――本当の問題は何か」

(2)Yahoo!ニュースオーサー記事更新!

(3)「現場みらい塾」第2期、第3期募集開始!

【3】<ご紹介>

(1)「都市開発の未来と地域再生のフロンティア」12月13日、14日 開催

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【1】 「監視と集計のあいだ:プライバシーの社会的側面」

名古屋大学大学院法学研究科 教授 大屋 雄裕

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深淵を覗くものは深淵に見返されていると、ニーチェは書いている『善悪の彼岸』。街頭の広告を見る我々も、実は広告に観察されている。

「デジタル・サイネージ(電子掲示板)」が普及していることに、多くの人が気付いているだろう。液晶モニターを利用した広告で、駅の通路などによく見られる。

我々に情報を届けることを第一義的な目的にしているものではあるが、その裏側にカメラを仕込み、どのような人がどのような関心を広告内容に抱いているのかを分析する仕組みが、すでに実現している。スーパーで商品や価格をチェックしていく顧客の視線の動きを記録・分析し、マーケティングにつなげようという試みも進んでいる。我々が「見ている」意識でいる陰で、実は「見られている」ことになるわけだ。

近年活用が進んできた「ビッグデータ」の中には、我々の行動を監視することによって蓄積されたこのような情報も含まれている。社会的な批判を集めて再検討に追い込まれたが、駅通路の各所に設置したカメラの映像に顔認識技術を組み合わせ、通行者が駅や関係施設の中をどのように移動しているかを分析しようという計画も存在した。

街頭や店舗内のあらゆる場所にカメラが設置されるとき、我々の日常生活はすべて記録され、もはやプライバシーや秘密の残る場所などないかのようにさえ思われるだろう。ジョージ・オーウェルが『1984年』で問題にした超監視社会が、間近に迫っていると警鐘を鳴らす人も多い。

だが重要なのは、これらの監視・分析技術が求めているのは我々を個体認識することであって、それが誰かを突き止めることではない点だ。ビジネスの世界が関心を抱くのは「顧客としての私」である。求められる情報を効率よく送り届けるような個別化したマーケティングを実現するために必要なのは各顧客を区別すること、たとえば「customer No. 6」と認識できることであって、それ以上ではない。ある顧客がこのビジネスの関係ないところでどのような人生を送っているか、どこの誰かを理解する必要は、特にないだろう。

そして特定の顧客情報によって蓄積されたデータが「この私」の人生に直接の影響を持たないことが保障されているならば、それをプライバシーや秘密として重視する必要がどの程度あるだろうか、ということも問題となる。

たとえばあるネット書店の特定の顧客がどのような本を買っているかという情報が漏洩し、それをもとに顧客の人格について分析されたとしても、それが現実のどこの誰かというアイデンティティと結びつかなければ大きな問題はないだろう。

我々の人生に対する危機は「監視されること」それ自体からではなく、その「情報の使われ方・結合のされ方」から生じると考えた方がよい。

だとすれば問題は技術そのものではなく、技術をどのように利用するか、特定の利用方法を逸脱していないことをどのように保証するか、という社会的な問題へと返ってくることになる。ビジネスの効率化に後押しされた技術的発展を押しとどめようとする「英雄的な」試みよりも、こちらの可能性に賭ける方が多少勝ち目があるかもしれない。

個人情報の収集・提供だけでなく結合・集計のあり方に一定の規制を加え、それが遵守されていることを保障する(我々が信頼できる)組織を作るといった方向性が、具体的には想定されることになるだろう。

かつてプライバシーは、たとえば私邸の内側を覗き込んで写真を撮られない権利、壁の内側に入り込まれない権利といったように、物理的な秘密を基礎として発展してきた。だが現在、それぞれは公開されており秘密とは呼べない情報を組み合わせることによって「この私」の属性や性格が暴かれてしまうことが問題となっている(プロファイリング)。

物理的事象を扱う技術的側面のみでなく、社会的な側面からそれを捉えることが必要になってきていると言うことができるだろう。

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大屋 雄裕 (おおや たけひろ)

1974年生まれ。1997年・東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科助手、名古屋大学大学院法学研究科助教授・准教授を経て2013年より現職。専攻は法哲学。著書に『自由とは何か:監視社会と「個人」の消滅』(ちくま新書、2007)、『自由か、さもなくば幸福か?:21世紀の〈あり得べき社会〉を問う』(筑摩選書、2014)、『立法学のフロンティア2 立法システムの再構築』(共著、ナカニシヤ出版、2014)などがある。

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【2】(1) 第207回J.I.フォーラム  「人口減少――本当の問題は何か」

「地方消滅」という言葉が一人歩きしています。実は、人口減少は40年前から予測されていました。そして、政府もメディアもそれを「望ましいこと」と捉えていたのです(1974年人口白書)。

ところが、今「人口減少は大変だ」の大合唱です。本当に大変なのは何なのでしょうか。

人口が減ることか、それとも、それを受けとめる社会のあり方のほうか。

少子化対策の成否を問わず、日本の人口が増えることは当分ないでしょう。ならば私たちは、今何をしないといけないのでしょうか。一度冷静に考えてみましょう。

歴史人口学と地方自治のエキスパートに来て頂きます。

◯日 時: 平成26年12月24日(水)18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場: 日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

◯ゲスト: 鬼頭 宏   上智大学 教授

福嶋 浩彦  元消費者庁長官・中央学院大学 教授

コーディネーター : 加藤 秀樹 (構想日本 代表)

◯主 催: 構想日本

◯定 員: 160名

◯参加費: 一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費: 4,000円(ご希望の方は懇親会参加と明記してください)

※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。

「頤和園(いわえん)溜池山王店」 港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※フォーラムへのご参加は、 info@kosonippon.org  にお願いします。

なお、お申し込みの際の必要事項等詳細につきましては、HPを御覧ください。
( http://www.kosonippon.org/forum/regist.php?m_forum_cd=331 )

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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。 TEL 03-5275-5607

*内容に関するお問い合せは、
伊藤/田中まで。TEL 03-5275-5607

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(2) Yahoo!ニュースオーサー記事更新!

Yahooニュースにオーサーとして投稿している記事が更新されました。ぜひ御覧ください。

代表 加藤秀樹

◇12月9日 「世界に例を見ない取り組み 政府の事業のデータベース化」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20141209-00041319/

◇11月12日 「政治とカネ」せめて一般国民、企業並みにせよ

http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20141112-00040668/

ディレクター 伊藤伸

◇12月7日 「改めて考える選挙費用600億円の使い道 ~行政事業レビューシートから~」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/itoshin/20141207-00041192/

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(3)「現場みらい塾」第2期、第3期募集開始!

政策シンクタンクPHP総研と共同で本年度スタートした「現場みらい塾」。受講生の満足度が高かったこと御まり、来年度は第2期、第3期を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

テーマ

「”自分事”からはじめる地方自治 ~現場目線で人口減少時代を突破する ~」。

人口減少時代に突入した今日。地域にとって最も必要なのは、直面するさまざまな課題を自分事として捉え、考え、行動できる人材です。前例踏襲を振り払い、マニュアル依存から抜け出して、課題解決と未来創造に挑戦する。そんな強い志をもち、現場で活躍できる地域リーダー人材を輩出することをめざします。

特 徴

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

スケジュールなど詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/05/16.php

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【3】<ご紹介>

(1)関西学院創立125周年 国際公共経済学会第29回研究大会

<代表の加藤、ディレクターの伊藤が登壇します>
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「都市開発の未来と地域再生のフロンティア」

今後10年あまり先の都市と地域を見通すことを共通のテーマに、計7つのパネルディスカッションおよびシンポジウムを企画。都市と地域の将来について、多角的に討論いたします。皆様のご参加をお待ちしております。

◇日 時 平成26年12月13日(土)、14日(日)

◇場 所 関西学院大学西宮上ケ原キャンパス G号館(兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155)

◇参加費 無 料 (一般参加歓迎・参加登録あり)

◇内 容 「市民参画型行政・オープンガバメントのあり方」「震災復興を経た地域再生と行政機能」他多数。

◇加藤と伊藤の登壇スケジュール 13:00~(201号教室)
基調講演  「市民参画型行政・オープンガバメントのあり方」 加藤 秀樹 (構想日本)
パネルディスカッション 座長 上村 敏之 (関西学院大学)
パネリスト 伊藤 伸 (構想日本) 岩本 壌 (大阪市・市政改革室) 加藤 久雄 (神戸市・企画調整局)

◇申込先 詳細はこちらから http://ciriec.com/2014/10/29info/

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