【No.690】「日本独自の寄付文化を見直そう」|ノンフィクションライター    近藤 由美氏|
2015.01.29

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J.I.メールニュース No.690 2015.01.29発行

「日本独自の寄付文化を見直そう」

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【1】<巻頭寄稿文>

「日本独自の寄付文化を見直そう」

ノンフィクションライター    近藤 由美

【2】<お知らせ>

(1)第209回J.I.フォーラム  2015年2月18日(水)開催

「日本の財政、本当はどうなのか ~金融とあわせて考える~ 」

(2)「現場みらい塾」第2期、第3期募集開始

【3】<ご紹介>

(1)高崎経済大学の学生プロジェクト 地域と大学を繋ぐ”0号館”を作りたい!

(2)展覧会  東京駅開業百年記念 「東京駅100年の記憶」

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【1】「日本独自の寄付文化を見直そう」

ノンフィクションライター    近藤 由美
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昨年、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者と支援団体を支援する“アイスバスケットチャレンジ”が巷を賑わせました。これはアメリカに端を発したチャリティ活動で、支援者はバケツ一杯の氷水を被るか、寄付をするか、あるいは両方選択することができるというものです。

日本でもSNSを通して広がり、活動に賛同する財界や文化人などの著名人が頭から氷水を被る姿が動画サイトなどにアップされ、大きな話題になりました。こうしたALS患者の支援団体、いわゆるNPO(非営利組織)へのチャリティ活動は、欧米型の寄付の特徴の一つです。個人が主体となり、仲間と伴に自由に楽しみながら募金活動を行うやり方は欧米ならではといえるでしょう。

しかし、この活動には、支援者が次の支援者を指名するというルールがあり、いわゆる指名を受けた“セレブリティ”が氷水を被る姿は何とも、ALS患者の支援目的とはかけ離れた、単なる面白いイベントと化しているように感じたのは私だけでしょうか。

拙書『世の中を良くして自分も幸福になれる寄付のすすめ』にも記しましたが、寄付の効果を最大化する三つの戦略として、「寄付するもしないも自己の自由意思で選択」し、「支援したい相手とのつながりを深められる方法」で、「支援したい相手に良い影響を与えたことが明確にわかる」ことが、世の中と自分自身をより良い方向に導く「実行して良かった」と思える寄付の基本原則だと思うのです。

こうした寄付の原則は、実は日本の伝統的な寄付の特徴でもあります。たとえば、奈良の東大寺の仏像建立から始まった「寄進や勧進」、仏教的背景に基づく「浄財やお布施」、鎌倉時代に遡る、地域の金融・相互扶助の機能を担ってきた「講や頼母子、無尽」、江戸時代には、地域のみんながお金や労働力を出し合い、橋や道路、学校などを建設する「自普請」があり、寄付が人々の暮らしを支え、精神の拠り所になっていたことがわかります。日本の寄付は、各共同体の中で育まれてきた「地域」や「仲間」との繫がりにあり、お互いの幸せに直結する「何か」を生み出す、地域のシステムを維持するための重要なエネルギー源だったのではないかと考えます。

一般に「寄付」というと、赤い羽根の共同募金会、日本赤十字、ユニセフなどの団体、中間支援組織への寄付を連想される方が多いと思います。ですが、震災時に多く見られたNPOやNGOなどへの寄付は、日本ではごく最近のことなのです。さらに、東日本大震災では、我々の寄付金が然るべき人や場所、目的に使われていないのではないかという疑問を持たれた方も多かったと思います。

たとえば、寄付の受け皿となる中間支援団体では我々の寄付金から団体の運営費がコストとして差し引かれ、団体側が選定した支援先に寄付されるしくみになっています。また、NPO法人などに直接寄付した場合、組織によっては、寄付金の使途に関する情報開示や活動報告が不十分だったり、中には開示されていないケースもありました。永きにわたり、人々の目に見える形で育まれてきた「地域の寄付」と異なり、地域を超えた「団体」への寄付は、する方もされる方も、まだまだ未熟なようにも思えます。

近年、どちらかというと、欧米型の寄付がクローズアップされがちですが、そろそろ日本独自の伝統的寄付文化を再発見(発掘)し、再評価する時期が来ているのではないでしょうか。

「袖振り合うも他生の縁」「情けは人の為ならず」といった表現にあるように、元々、日本人には「縁(えにし)」を大切にする心が備わっています。先人たちから受け継いだ地域の絆や仲間の力に象徴される「自主自立の精神」は、私たち日本人のDNAに組み込まれているはずです。

地方創生が叫ばれるなか、「お金の寄付」だけを前提とせず、有形・無形問わず、寄付できるものを自由に選び人々とつながる—-。そうすることで、地域社会に少しずつ、ポジティブで良いインパクトを与え続けることができ、世界との交わりの荒波に揉まれてもなお、「日本の良さ」を土台に発展できるのではないかと思っています。

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【書籍のご案内】

★「世の中を良くして自分も幸福になれる「寄付」のすすめ」東洋経済新報社
近藤 由美 著

http://store.toyokeizai.net/books/9784492733127/
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近藤 由美(こんどう ゆみ)

1967年宮城県生まれ。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒。PHP研究所、(株)金曜日(「週刊金曜日」)、ダイヤモンド社などの出版社で編集者として勤務。99年にマネー誌「ダイヤモンドZAi)」の創刊に参画した後に独立。マネー関連の企画、執筆が多かったが、最近では歴史や心理、哲学などの視点から、お金の未来、役割について考察している。近著に『世の中を良くして自分も幸福になれる「寄付のすすめ」』(東洋経済新報社)がある。

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【2】(1)  第209回J.I.フォーラム

「日本の財政、本当はどうなのか ~金融とあわせて考える~ 」

27年度の政府予算案は史上最高の96.3兆円、債務残高は27年度末に1035兆円(地方含む)になる見込みです。一方、税収は2年前に比べて11兆円増の54兆円、公債費(新たな借金)は平成20年度以来の40兆円切れ(37兆円)など、明るい材料も見え、財政については、 「破綻リスクが高い」 、「改善する」と意見が二分しています。

財政と金融双方のエキスパートにお越しいただき、この先の財政を考えるうえで重要なポイントとなる金利の上昇リスクや、世界の経済状況から見た日本経済の見通し、いわゆる破綻とはどういう状況を言うのかなどについて議論していただきます。

◯日 時: 平成27年2月18日(水)18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場: 日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

◯ゲスト: 池尾 和人  慶應義塾大学経済学部 教授

小黒 一正  法政大学経済学部 准教授   他

コーディネーター : 加藤 秀樹 構想日本 代表

◯主 催: 構想日本

◯定 員: 160名

◯参加費: 一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。
◯懇親会参加費: 4,000円(ご希望の方は下記懇親会参加に○をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」
港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※フォーラムへのご参加は2月17日(火)18:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

なお、お申し込みの際の必要事項等詳細につきましては、HPを御覧ください。
( https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php )

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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。 TEL 03-5275-5607

*内容に関するお問い合せは、
伊藤/田中まで。    TEL 03-5275-5607

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(2)「現場みらい塾」第2期、第3期募集開始

政策シンクタンクPHP総研と共同で本年度スタートした「現場みらい塾」。受講生の満足度が高かったこともあり、来年度は第2期、第3期を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

テーマ

「”自分事”からはじめる地方自治 ~現場目線で人口減少時代を突破する ~」

人口減少時代に突入した今日。地域にとって最も必要なのは、直面するさまざまな課題を自分事として捉え、考え、行動できる人材です。前例踏襲を振り払い、マニュアル依存から抜け出して、課題解決と未来創造に挑戦する。そんな強い志をもち、現場で活躍できる地域リーダー人材を輩出することをめざします。

特 徴

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

スケジュールなど詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/05/16.php

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【3】<ご紹介>

構想日本が応援している活動に関するお知らせです。
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(1)「大学から徒歩100歩の場に地域と大学を繋ぐ”0号館”を作りたい!」

高崎経済大学の学生が集まって始めたプロジェクトです。プロジェクト達成のために、皆様の出来る形での応援をしてあげてください。

「“地域と大学”“社会人と大学生”の架け橋になるようにという想いを込めて、大学から徒歩100歩の場所にある、築100年の歴史ある古民家をリノベーションしています。電気や水道のインフラを整え、みんなが集まりやすい場を目指した“0号館”を作るための費用を募っています。」

★もしよろしければ、可能な応援方法で応援していただけないでしょうか?

1)クラウドファンディング(出資という形での応援【1月29日(木)午後11:00 まで】
→クレジット決済が基本ですが、振込も受け付けております。)
URL: https://readyfor.jp/projects/0gokan

2)興味を持っていただけそうな方へ情報を送る

3)がんばれという応援 「がんばれ!の一言だけでも、力をいただけます!」

※クラウドファンディング(インターネットを通じてたくさんの人々に比較的少額の資金提供を呼びかける仕組み)

(2)展覧会 東京駅開業百年記念 「東京駅100年の記憶」
(第199回J.I.フォーラム ゲスト 松隈洋様より)

◎展覧会 東京駅開業百年記念「東京駅100年の記憶」

3つの大学(鹿児島、日本、京都工芸繊維)の100名を越える学生たちが、東京駅と丸の内地区のジオラマ模型を制作しました。

ジオラマは、3つの時代(開業当時の1914年、50年後の1964年、100年後の現在)からできており、この街と私たちにとって、いつの時代が最も調和がとれていたのかを観客自ら見比べて考えてもらいたい、という願いが込められています。

移り変わる街の様子が、俯瞰できます。是非足をお運び下さい。

◇会 期:2014年12月13日(土)-2015年3月1日(日)※休館日ご注意下さい

◇会 場:東京丸の内・東京ステーションギャラリー

◇入館料:一般900円 高校・大学生700円 中学生以下無料
詳細はこちらから
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201412_TOKYO_100.html

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