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【No.72】予算・財政制度の変遷に見るこの国の姿

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予算・財政制度の変遷に見るこの国の姿
JIメールニュースNo.72  2002.11.8
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■■ 目次 ■■
1.《日本の風景》予算・財政制度の変遷に見るこの国の姿
― 自らの「アタマ」で国家経営を考える ―
桜内 文城(構想日本政策アナリスト)

2.《10月30日第64回「JIフォーラム」の報告》
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1.《日本の風景》予算・財政制度の変遷に見るこの国の姿
― 自らの「アタマ」で国家経営を考える ―
桜内 文城(構想日本政策アナリスト)

明治、特にその初期は、日本人が自ら国家というものを作り出し、その
意思決定の仕組みである統治機構のあり方を自らの「アタマ」で一から設
計した時代である。その一例として、明治期以降の予算・財政制度の変遷
を眺めてみよう。
〇明治初期の予算・財政制度の変遷
我が国の近代的会計制度の導入は、福沢諭吉の「帳合之法」(明治6年
刊行)及び大蔵省の「銀行簿記精法」(同)に始まるとされる。これらは
いずれも当時の英米式簿記法を解説したものである。明治新政府は、これ
らを手本として、官庁におけるお金のやり取りについても、複式簿記
を導入することとした。
注1:複式簿記とは、単にお金の出し入れに着目する家計簿や大福帳の形式
(単式簿記)とは異なり、全ての取引について、その原因と結果という二
つの側面から記録することを通じて、計算の正しさを確保するとともに、
お金の使い途をより明確にする記帳方法をいう。
大坂造幣寮(明治4年開業)を手始めに、明治8年にはまず大蔵省の出納記
帳の方法を全て複式簿記に改めた後、明治12年以降、全官庁のお金のやり
取りを複式簿記によることとした。
これとは別に、明治6年、大蔵省に勤めていた井上馨と澁澤榮一が、新政
府の財政危機を憂慮し、「財政整理ニ関スル建議」を提出して辞職した後、
大蔵卿(今で言う大蔵大臣)の大隈重信はこれに反論すべく「明治6年歳入
歳出見込会計表」を公布し、政府財政の健全性を世に訴えた。このことが
契機となり、その後、政府予算の公開が慣行となり、我が国の予算・財政
制度の形成に大きく寄与したとされる。
明治14年、それまでの諸法規を整理・体系化し、予算の作成から決算終了
まで一貫した予算・財政制度を成文化した会計法(太政官達33号、明治15年
改正)が制定された。ここでは、以前と同様、官庁のお金のやり取りにお
いて複式簿記が基調とされていた他、フランス式簿記法に起源をもつ時価
主義による財産目録の作成も義務付けられていた。
注2:時価主義とは、土地や株式などの価格の変化に応じて、財務諸表に
計上する価格を今現在の価値(時価)とするやり方をいう。
〇現行予算・財政制度のルーツ
上記の通り、明治初期の予算・財政制度は、官庁のお金のやり取りにお
ける複式簿記と時価主義による財産目録の作成といった近代的会計の要素
を兼ね備えていた。しかし、明治22年、ドイツ諸邦にならった大日本帝国
憲法の発布に伴い、その附属法規として新たに公布された会計法(明治23
年施行、大正10年改正)では、ドイツ官房学のカメラル式簿記(単式簿記
・現金主義)による記帳方法へと変化した。そして、この単式簿記と現金
主義という記帳方法は、現在に至るもなお、変わることなく維持されている。
国家の意思決定の仕組みを定める憲法が登場すると同時に、その意思決
定のプロセスと責任の所在を財務面から明らかにしようとする近代的会計
の機能が失われたというのは、大いなる歴史の皮肉とも思われる。
〇国家経営のための制度的基盤
国の予算・財政制度は、国家の経営や意思決定にとって、航空機の“計器”
のような役割を果たしている。特に、政府を取り巻く経済状況が複雑化した
現代では、ハイテクジャンボを運航するように、刻々と変化する経済・財政
状況を絶えずチェックする必要がある。要するに、予算・財政制度は、国家
経営のための制度的基盤であると同時に、適切な経営を行うための実践的な
ツールでもある。
21世紀に生きる我々から見ても、明治初期に採用されていた複式簿記に
よるお金のやり取りや時価主義による財産目録といった予算・財政制度は、
驚異的ですらある。そこには、国家経営における効率性と合理性を自らの
「アタマ」で徹底的に考え、そして、これを実践する強い意志を感じる。
また、そのような先進的な予算・財政制度がどうして改廃されてしまっ
たのか。憲法制定までの過程で何が変わったのか。筆者の推理は、国家体
制の確立と共に、政治的リーダーの間で、自らの「アタマ」で国家経営を
考える態度が薄れてきたのではないか、というものである。それを確かめ
る術もないが、現在の我が国が置かれた状況と重ね合わせてみても、興味
が尽きない謎である。
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2.《10月30日第64回「JIフォーラム」の報告》
「生きる」ことは「食べる」こと。人間の体は、私たちが毎日、口にする
食べ物によって維持されているのです。自分が毎日、口にしている食べ物の
ことを、あなたは真剣に考えたことがありますか。
当日は、ちまたでよく聞く農業の”制度”や、断片的に耳にする”有機農業”
ではなく、農業とは何なのか、どういうことをやっていくものなのかという
ことについて、農業の”名人”が語りました。
有機農業を手がけるある”名人”は、生命力ある食べ物を作りたいというの
が就農者としての自分のポリシーと語り、「食べ物がまともでなければ、普
通の生活はできない。」と、家計の中で食費が真っ先に節約の対象とされる
現状に警鐘を鳴らしました。
また、”有機””無農薬”といった消費者心理をくすぐるキャッチフレーズ
が氾濫する中で、「生命力ある食べ物をつくることが本来の目的で、そのた
めにどんな手段があるかというところからスタートしたはずだった。」と、
形式的な”有機””無農薬”を求める最近の傾向を戒める発言もでました。
「米粒や葉を見るだけでそれがどのような環境・条件の下で育ったかがわ
かる。」と、数字で表されないことを追求する農業の大切さを強調。「田ん
ぼに入れば、その農家が手をかけているかどうかがわかるが、手をかけてい
る農家は就農者が65歳以上の農家。異常気象にみまわれた場合、『感性豊か
な70歳以上』の農家は収穫が確保できるだろうが、若手の農家は難しい」と、
『感性豊かな70歳以上』という言葉に、豊かな現場経験の価値が集約されて
いました。
「人間を育てるも作物を育てるのも同じ」。様々な例をあげつつ、生き物
を育てる意義について、たっぷりと語ってくださいました。
<討論者>
加藤 勝明(埼玉県北本市・農家<トマト>・市議会議員)
門脇 栄悦(山形県村山市・農家<西瓜>)
富樫 俊一(山形県鶴岡市・農家<だだちゃ豆>)
長澤 豊 (JAやまがた代表専務理事)
<コーディネーター>
徳永 光俊(大阪経済大学日本経済史研究所所長)
※当日の議事録は、後日ホームページにて公開致します。当日の模様
を収録したビデオは1本3000円にて販売いたしております(お問い合
わせは info@kosonippon.org までお願いします)。

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