【No.726】 「 牛 目 」|ものがたり診療所所長  佐藤 伸彦氏|
2015.10.08

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J.I.メールニュース No.726 2015.10.08 発行

「 牛 目 」

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【1】<巻頭寄稿文>

「 牛 目 」

ものがたり診療所所長  佐藤 伸彦

【2】<お知らせ>

(1) 第217回J.I.フォーラム  10月27日 開催決定

「若者の政治参加」 ~若者にとって政治が「自分事」になるのか~

(2)「ふるさと住民票」反響続々!

(3) 今後の構想日本の活動

(4) 「現場みらい塾」 第3期 募集中

【3】<ご紹介>

(1) 第1回 創作サーカスフェスティバル「SETOラ・ピスト」in 香川

先週のメルマガ執筆者 田中未知子さんからのお知らせです

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【1】「 牛 目 」

ものがたり診療所所長  佐藤 伸彦

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学生の時、確か一般教養の哲学か倫理学の授業だったと思います。

「がんを治療する薬を発見して何百万人の人を救うのと、僻地の診療所でお腹が痛い人を治すのと、どちらが・・・」 という質問が出されました。

問いの最後は、良いですか?、凄いことですか?、やりたいですか?、どれであったかは覚えてはいません。
大学生になってすぐ、それなりに希望に満ちて入学したばかりの学生に対する質問でした。

「新薬を発見して多くの人を救いたい」という気持ちもある一方で、「目の前の人を救えなくてどうする」という意見にも一理あると思った記憶があります。
その頃は私自身さほど確たるものもなく漠然と医師を目指していたように思います。

今は、この問いはとても意地悪だと思うようになりました。

どちらも大事なのですが、どちらもすることは不可能に近いのです。

「先生たちはどうして患者さんにそこまで関われるのですか?よく時間がありますね」という質問を受けることが多くなりました。

私自身は患者さんを選別しているわけではありませんが、はたから見ていると、私は患者さんの紹介状を見ただけではあまり気が乗らないというか、「ふーん、大変だね」といった程度の反応しかないようです。うちの社会福祉士はその辺りのことを熟知していて、本当に私に繋げたいと思う患者さんとは、直にあって相談を受ける外来に予定を無理にでも組み込んでしまいます。

患者さんや家族と話しをしていけばしていくほど、私が真剣になっていくのがわかるようです。

私自身もそのことは感じていて、どうも症例検討のような話しには身が入らない。ただし、医学的に考えるのにはこの段階の方が実にすっきり判断ができるのでやりやすいのです。

【 目の前を、たくさんの牛が歩いていく 生贄にされるために歩かされているという

ある偉いお方が、突然あの牛は助けなさい、と仰った

それを見ていた弟子の一人が、こう聞いた
「たくさんいる牛の中で、どうしてこの牛だけを助けようと思ったのですか?」

師匠は一言

「目があったからだ」 】

この逸話はいつからか私の中に出来上がっていました。いつ誰から聞いたのかもわからないのです。

調べてみると、『ETV特集 加藤周一 歴史としての20世紀を語る』(2000年)の中で同じような話があるようです。
(http://d.hatena.ne.jp/hanahanamegane/20090317#1237235097)

「一頭だけ助けるのは不公平だという弟子に対して、目の前を歩いているからだと、その牛を生かした」

「目の前の事象を捉え親身になるのが大切で、統計的なことを述べてもだめ」

「ひとりの人の命を大事に思えないのに、抽象的に世界の何百万の命のことをしゃべっても言葉だけ」 というようなことも話をしているようです。

しかし、実際には孔子がこのようなことをいった話は論語などを調べても出てこないようです。ということは、私はこの番組を見ていたのかもしれません。そして曖昧なままにあたらしい話を作ったのでしょう。

それはさておき、「目があったから」、

これは私の臨床の態度姿勢をすっきり言い当てているように思います。

忙しい、時間がない、よく聞く愚痴ではあります。
でも、時間の多寡ではなく、どのようにその人と関わるかという私たちの問題です。忙しいから次の人のことやらなくてはならないことを頭に浮かべて目の前の人と関わっていません。忙しいのは当たり前です。

一瞬でもその人の前では全力を尽くす、その姿勢が大事なのではないでしょうか。
相手はおそらくその姿勢を敏感に感じ取ります。

あなたの背中に忙しいと書いてあるので話かけられなかった、という患者さんの言葉もあります。

超高齢者社会をどうするのか、とても大事な視点です。社会としてシステムとしてどうやって支えていくのか考えていかねばなりません。
システム・制度で超高齢社会を救うのか、それとも目の前のじいちゃんばあちゃんを支えることで社会を救うのか。

私はとりあえず、目のあった患者さんに一生懸命関わることからシステム・制度の方を眺めていきたいと思います。

「どうしてそこまで関われるのですか?」

「目があったから」

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佐藤 伸彦 (さとう のぶひこ)

1958年東京生まれ。富山大学薬学部、医学部卒業。成田赤十字病院内科、麻生飯塚病院神経内科を経て高齢者医療に携わり、市立砺波総合病院地域総合診療科部長を経て、平成21年4月に医療法人社団ナラティブホー ムを立ち上げ、平成22年4月1日「ものがたり診療所」を開設。平成24年は度厚生労働省在宅医療連携拠点事業所として地域医療と終末期医療をキーワードに包括チーム医療を実践。ナラティブホームの物語」を医学書院から2015年3月に刊行。

医療法人社団ナラティブホーム  http://www.narrative-home.jp/
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【書籍のご案内】

★「ナラティブホームの物語: 終末期医療をささえる地域包括ケアのしかけ」医学書院  佐藤 伸彦 著

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【2】(1)第217回J.I.フォーラム  10月27日 開催

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「若者の政治参加」 ~若者にとって政治が「自分事」になるのか~

安保関連法案の審議過程で「SEALDs」など若者のデモや発言が大きな話題となりました。

法案への賛否は別にして、政治や社会に無関心とされていた若者が政治を他人事ではなく自分事と考えるきっかけとなったという意味では、注目すべきことです。より広く捉えると、若者のNPOやボランティア活動は、20年来随分増えています。これも、政治、社会参画の一つの形でしょう。

さらに、構想日本が進めている自治体行政への住民参加も大きい成果をあげています。このような動きについて若者のリーダーを交えて、議論します。

◯日 時:平成27年10月27日(火) 18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

◯ゲスト:鈴木 邦和(日本政治.com 代表)

鈴木 智子(静岡時代 代表理事)

西田 亮介(東京工業大学 准教授)

原田 謙介(YouthCreate代表) 他

◯コーディネーター : 加藤 秀樹(構想日本代表)

◯主  催:構想日本

◯定  員:160名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

「頤和園(いわえん)溜池山王店」港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※フォーラムへのご参加は10月26日(月)18:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

お申し込みはこちらから https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php

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(2)「ふるさと住民票」反響続々!

仕事などで居住地を時々変える必要がある人や、ふるさとに強い愛着を持ちながらも離れた都市で暮らす人など、近年住民と自治体との関係が多様になっています。住民と自治体を従来の「単線」から「複線」的な関係(柔軟な関係)に変えることを目的として、「ふるさと住民票」の仕組みの提案を、8月20日に記者発表を行いました。

記者発表には、共同呼びかけ人の中から、群馬県太田市の清水聖義市長、埼玉県和光市の松本武洋市長、香川県三木町の筒井敏行町長、群馬県下仁田町の吉弘拓生副町長、鳥取県日野町の山口秀樹副町長、元我孫子市長で中央学院大学教授の福嶋浩彦さん、構想日本代表の加藤秀樹の7名が登壇。参加した記者は約40名にも上りました。

今回の発表をキックオフとして、今後全自治体に呼び掛けていく予定です。皆さんも是非「ふるさと住民」になりましょう!

<共同呼びかけ人>
片山 健也(北海道ニセコ町長)
高橋 正夫(北海道本別町長)
菅野 典雄(福島県飯舘村長)
清水 聖義(群馬県太田市長)
金井 康行(群馬県下仁田町長)
松本 武洋(埼玉県和光市)
景山 享弘(鳥取県日野町長)http://www.town.hino.tottori.jp/secure/34900/hinosouseisennryaku.pdf
筒井 敏行(香川県三木町長)http://www.town.miki.lg.jp/life/dtl.php?hdnKey=2780

福嶋 浩彦(中央学院大学教授・元千葉県我孫子市長)
山下 祐介(首都大学東京准教授)
加藤 秀樹(構想日本代表)

事務局 構想日本(伊藤、茂垣、山本)
TEL: 03-5275-5607 FAX: 03-5275-5617 Email: info@kosonippon.org

※配布資料はこちらからご覧いただけます。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/project/detail.php?id=681

その他、情報一覧はこちらから   https://www.kosonippon.org/wp-manager/article/index.php

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(3)《今後の構想日本の活動》

《行政関係》

10月10日(土)  茨城県 行方市「第2回なめがた市民100人委員会」

10月13日(火)  香川県 三木町「第4回まんで願いきいきタウン構想策定委員会」

10月14日(水)  千葉県 富津市「第4回富津市創生会議」

10月16日(金)  千葉県 富津市「第5回富津市民委員会」

10月17日(土)  茨城県 那珂市「外部評価委員会」

10月18日(日)  福岡県 大刀洗町「住民協議会(2)」

10月19日(月)  香川県 三木町「第4回総合戦略策定委員会」

10月25日(日)  茨城県 行方市「第3回なめがた市民100人委員会」

今年度の実施一覧はこちらからご覧いただけます→ https://www.kosonippon.org/wp-manager/blog/?page_id=145

《その他》

2015年10月~隔週月曜日 京都大学経済学部 「公共経営論2」講義 (代表 加藤秀樹)

毎回ゲストを呼んでの講義です。主なゲストは河野太郎氏、森田洋之氏、アトキンソン・デービッド・マーク氏他。

2015年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論II」講義 (総括ディレクター伊藤伸)

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(4)「現場みらい塾」 第3期 募集中

政策シンクタンクPHP総研と共同で昨年度スタートした「現場みらい塾」。

その特徴は、

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

昨年の第1期受講生の反響と要望の大きさを考え、今年度は第2期(5月~8月)に続き、第3期(11月~2016年2月)を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

『第3期』は次の通り  ※日程が変更になりました

第1回:11月22日(日)13時~18時半、23日(月)10時~16時
第2回:12月12日(土)10時~18時
第3回:2016年1月16日(土)10時~18時
第4回:2016年2月6日(土)13時~18時半、7日(日)10時~16時

その他詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/11/22.php

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【3】<ご紹介>

構想日本が応援している活動に関するお知らせです。
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(1) 第1回 創作サーカスフェスティバル 「SETOラ・ピスト」in 香川

日本やフランスの一流舞台アーティストたちが高松で滞在制作して作られる新作「ないもの」公演のほか、伝統×現代舞台芸術の取り組み「シルク・EBESSAN」や、地元パフォーマーたちによる作品発表「実験劇場」、サーカス器具設置技術についてや滞在制作についてなど、この分野の発展のために欠かせない主題を話し合う場など、新しい文化を生み育て、発信しようとするコンセプトとメッセージに満ちたフェスティバルです。

◇日 時 10月11日~13日(火)

◇会 場 香川県香川町川東上2598  A会場・B会場

◇予定プログラム(抜粋)

Cirque Ebessan(しるく・えべっさん)、「NAIMONO(ないもの)」

「サーカス器具設置講習/成果報告」、「実験劇場」、「舞台作品創作と滞在制作について」、映像と資料展示「フランス大道芸フェスと現代サーカス発祥の歴史と今」など

◇入場料  無料~4,500円 (プログラムによって、料金が異なります)

予定プログラム、入場料の詳細は こちらから御覧ください http://www.setouchicircusfactory.com/seto_la_piste.html

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