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【No.739】「和算と算額 -和算の世界遺産化を目指して-」

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J.I.メールニュース No.739 2016.01.14 発行

「和算と算額 -和算の世界遺産化を目指して-」

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【1】<巻頭寄稿文>

「和算と算額 -和算の世界遺産化を目指して-」

関孝和数学研究所 研究員  小林 龍彦

【2】<お知らせ>

(1) 第220回J.I.フォーラム  1月28日 開催

「産業革命から「1.5℃」の気温上昇! 可能か。できなければどうなる。」

(2) 1月19日(火)構想日本「会員懇談会」開催

(3) 今後の構想日本の活動

(4)「現場みらい塾」 第3期 開催中

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【1】 「和算と算額 -和算の世界遺産化を目指して-」

関孝和数学研究所 研究員  小林 龍彦

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江戸時代の日本に、今日とほぼ同じような数学が発達していたことをご存じでしょうか。

そんな馬鹿な、と思われる方がいても不思議ではないのですが、計算記号や式の形、論理形式などを異にしながらも、現代とまったく変わらない数学が育っていました。

そのような数学を「和算」と呼んでいます。

近世日本の数学といえる和算は、源流を古代中国数学に求めることができます。漢文、縦書き、実用計算に重きをおいた数学でしたが、今日の数学と比較して遜色のないものでした。ちなみに、加減乗除という四則計算を表す言葉がありますが、これこそ中国生まれの数学用語なのです。

江戸時代には計算器具として十露盤(そろばん)も使われますが、これも起源は中国にありました。また、少し年配の方ならご存じと思われますが、十露盤の計算で発句する「二一天作五(にいちてんさくのご)」もその延長上にある用語なのです。

近世日本の数学和算は古代中国の数学を学ぶことで発展しました。その発展過程で、世界に類例のない特異な数学文化を生み出したのです。

「好み」(遺題)※の出題と算額奉納の風習がそれです。

これら二つの数学文化の誕生に、寛永4年(1627年)京都の豪商角倉の一族であった吉田光由が出版した『塵劫記』が大きく係わっていました。『塵劫記』は発刊後大変な評判を得る初等算術書になったのですが、評判につけ込んで海賊版も出回るようになりました。また、『塵劫記』をわずかに学んだ、にわか算術教師も出現したようです。

そこで吉田は一計を案じて、寛永18年版の『塵劫記』に解答なしの問題12問を出しました。当時の数学者はこれを「好み」と呼び、解答に熱中したのです。また、他の数学者も新作の問題を考案して、それらを「好み」の解答と一緒に出版することがおこなわれました。これが連鎖反応的に広がり、結果として、和算の発達と近世日本の数学文化の形成に大きく寄与することになったのです。

寛文年間(1660年代)には「好み」を解いて、それを数学の絵馬にして神社仏閣に奉納する数学者も出現するようになりました。延宝元年(1673年)に刊行された『算法勿憚改』の「目黒の好」と題する記事では「或人之云 武州目黒不動江参詣之節 宝前に数術を好て掛侍る」と伝えて、数学の解答を絵馬にして江戸市中の神社仏閣に奉納することが広まっていたことを教えてくれます。

神社仏閣に奉納された数学の絵馬を「算額」と呼びますが、以来、和算の発展とともに算額は全国各地で奉納されるようになりました。

算額には、問題、幾何学図形、答え、術文(計算法)と併せて奉納者の氏名、弟子や協賛者の名前などが書き込まれました。図形には人目に付くように彩色が施されました。見た目にも鮮やかだったのです。と同時に数学者の研究心を刺激し、算額の奉納競争なども演じられました。

算額の奉納は、「好み」と並んで近世日本数学発展の原動力であったともいえます。明治時代に入っても算額奉納の風習は根強く残りました。この事実は、明治以降も和算を愛する人が絶えなかったことを意味しているといえます。

現在、算額は最新の奉納を含めて914面が現存しています。江戸時代から今日に至るまで、2000面を優に超える算額が奉納されたと推測されています。華やかな算額文化を象徴する数といえるでしょう。また、900面に及ぶ算額が残っていることも奇跡といわなければなりません。

私は、中国でもヨーロッパでも出現することのなかった算額と算額奉納文化は、そのような文化を育んだ和算と併せて世界遺産に相応しい文化財であると考えています。また、大量に残されている和算書(刊本・写本)も和算や算額文化を理解するための貴重な史料であると思っています。世界遺産への道は容易ではありません。運動の推進には多くの人々の理解と協力が欠かせません。この小稿をここに寄せる理由もその点にあります。

忘れ去られていく「和算」、消えゆく運命にある「算額」、多くの人々に読まれることなく収蔵される「和算書」。

これらはいずれも後世に伝えていかなければならない日本の文化財であり、保存の推進と啓蒙は現代に生きる私たちの使命と思えてならないのです。

※「好み」(遺題) 解答をつけず問題だけを出して、後世の人に解答を求めた問題。

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小林 龍彦  (こばやし たつひこ)

1947年生まれ。高知県宿毛市出身。法政大学第二文学部卒。現在は前橋工科大学名誉教授、四日市大学関孝和数学研究所研究員、中国内蒙古師範大学客座教授、群馬県和算研究会会長の職にある。近世日中数学交流史の研究で東京大学大学院総合文化研究科から博士(学術)の学位取得。近著に『関孝和論序説』(共著、2008年、岩波書店)、「中根元圭と三角法」(笠谷和比古編『徳川社会における日本の文化状況』、思文閣出版、2015)、「算額を世界文化遺産に-取り組みの始めとして-」(『数学文化』、No.24、2015年)などがある。現在は、和算を世界遺産に登録するための準備運動に取り組んでいる。
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【2】(1)第220回J.I.フォーラム  1月28日 開催

「産業革命から「1.5℃」の気温上昇! 可能か。できなければどうなる。」

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昨年末、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が「パリ協定」を採択しました。

この会議が始まって20年目にしてすべての締約国(195カ国)が「産業革命前からの世界平均気温の上昇を2℃より低く抑え、1.5℃を目指そう」と決めたのは画期的です。

これは、二酸化炭素など温室効果ガスの具体的な抑制量は各国に委ねられるとしても、災害、文化、経済など様々な面で世界全体が温暖化の行く末に危機感を持っていることの現れでしょう。

私たちはこれをどう受け止め何をすべきなのか、一般財団法人地球・人間環境フォーラムとの共催で、3人の異なる分野の専門家の話を伺いながら一緒に考えたいと思います。

◯日 時:平成28年1月28日(木)  18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

◯ゲスト:岩谷 忠幸 (気象キャスターネットワーク)

亀山 康子 (国立研究開発法人 国立環境研究所)

水口 哲  (博報堂)

◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

◯主  催:構想日本

◯共  催:一般財団法人地球・人間環境フォーラム

◯定  員:160名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

「頤和園(いわえん)溜池山王店」港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※フォーラムへのご参加は1月27日(水)18:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

お申し込みはこちらから http://www.kosonippon.org/forum/index.php

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(2) 1月19日(火)構想日本「会員懇談会」開催

構想日本は毎年、会員の皆様を対象にした懇談会を行なっています。今年は1月19日(火)18時半から開催します。

構想日本の大きな特色は、政治、行政はもとより文化やエンターテイメントなど多様な分野で活躍している方々とともに活動していることで、本懇談会でもそのような方々にもご参加いただいています。

この会を通じて普段ないような出会いの機会もあると思います。

会員の皆さん、是非ご参加ください。また会員ではない方も、参加を機に会員になっていただければと思います。ご検討ください。

【構想日本会員懇談会】

◯日 時: 1月19日(火)18:30~

◯場 所: グランドアーク半蔵門 4F 光の間 東京都千代田区隼町1−1 03-3288-0111

会費等詳細は、お問い合わせください。 事務局 木下 まで

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(3)《今後の構想日本の活動》

《行政関係》

2016年2月13日(土) 茨城県 行方市「第6回なめがた市民100人委員会」

2月28日(日) 福岡県 大刀洗町事業仕分け

今年度の実施一覧はこちらからご覧いただけます→ http://kosonippon.org/blog/?page_id=145

《その他》

2015年10月~隔週月曜日 京都大学経済学部 「公共経営論2」講義 (代表 加藤秀樹)

公共政策の各論を毎回ゲストの講義で進めています。これまでのゲストは、

衆議院議員 河野 太郎氏、京都信用金庫 理事長 増田 寿幸氏、株式会社商工組合中央金庫 執行役員 小林 利典氏、財務省 近畿財務局長 武内 良樹氏、財務省 主税局主税企画官 関 禎一郎氏、厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室長 榊原 毅氏、南日本ヘルスリサーチラボ代表・医師・前夕張市立診療所長 森田 洋之氏、前松阪市長 山中 光茂氏、浜松市長 鈴木 康友氏、外務省 高田 真理氏、小西美術工藝社 アトキンソン・デービッド・マーク氏。

次回は、元ラグビーワールドカップ日本代表 平尾 剛氏。

2015年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論II」講義 (総括ディレクター伊藤伸)

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(4)「現場みらい塾」 第3期 募集中

政策シンクタンクPHP総研と共同で昨年度スタートした「現場みらい塾」。

その特徴は、

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

昨年の第1期受講生の反響と要望の大きさを考え、今年度は第2期(5月~8月)に続き、第3期(11月~2016年2月)を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

また、講義は4回ですが、内容は毎回独立していますので1回づつの参加もできます。

『第3期』は次の通り  ※日程が変更になりました

第3回:2016年1月16日(土)10時~18時
第4回:2016年2月6日(土)13時~18時半、7日(日)10時~16時

その他詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/11/22.php

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