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【No.794】「高野病院から日本の震災復興と地域医療を考える ―日本に迫る、他人事では済まされない医療崩壊―」

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J.I.メールニュース No.794 2017.2.9 発行

「高野病院から日本の震災復興と地域医療を考える

―日本に迫る、他人事では済まされない医療崩壊―」

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【1】<巻頭寄稿文>

「高野病院から日本の震災復興と地域医療を考える

―日本に迫る、他人事では済まされない医療崩壊―」

南相馬市立総合病院 医師 山本 佳奈

【2】<お知らせ>

(1) 第233回J.I.フォーラム  2017年2月23日(木)開催

(2) 今後の構想日本の活動

(3) Yahoo!ニュースオーサー 新記事投稿

(4) 構想日本「会員懇談会」 4月以降に…

【3】<ご紹介>

「高野病院 支援 寄付募集」

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【1】 「高野病院から日本の震災復興と地域医療を考える

―日本に迫る、他人事では済まされない医療崩壊―」

南相馬市立総合病院 医師 山本 佳奈

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昨年末、福島県双葉郡広野町にある高野病院の高野英男院長が、自宅の火災で亡くなった。81歳だった。

高野病院は、福島第一原子力発電所からわずか22kmに位置している。東日本大震災後、避難することなく双葉郡で唯一の病院として診療を続けていた。

高野院長は精神保健指定医・内科医・診療放射線技師・当直医・救急医をこなし、たった一人の常勤医として広野町の住民や復興関係に携わる作業員の診療を担い続けていた。高野病院は、地域に欠かせない存在であったのだ。

ところが院長の突然の死により、高野病院はたった一人の常勤医を失った。

高野病院は存続の危機に陥り、入院患者はもちろん、広野町の住民や復興に携わる作業員の人々の命も危ぶまれることになった。

火災の翌日には、遠藤智広野町長から桜井勝延南相馬市長に支援要請があり、南相馬市立総合病院の有志の医師が中心となり高野病院を支援する会を立ち上げた。
まず、ホームページ※1やFacebookページ※2を作り、情報発信を積極的に行った。次に、ボランティア医師の募集や、支援してくださる近隣の病院からの医師派遣の取りまとめを行った。また「Readyfor」によるクラウドファンディング※3を立ち上げ、寄付の呼び掛けも始めた。

なんとか1月に勤務するボランティアの医師を確保することができ、2月から3月末まで中山祐次郎医師が常勤医として働くことも決まった。しかし、4月以降に勤務する常勤医は決まっていない。早急に常勤医を確保できなければ、入院患者に質の高い医療を提供することは難しい。ボランティアによる支援も長くは続かない。4月以降は閉院も免れないだろう。

高野病院を襲った今回の危機は、浜通りや被災地だけの問題ではない。地方における「医療崩壊の象徴」だと私は考える。たった一人しか勤務医がいない病院は、同じような状況にいつなんどき陥っても不思議ではない。高野病院での出来事は氷山の一角に過ぎないのだ。

いったいどういうことなのか?地方と都市部の各々が抱える問題から医療崩壊の危機について述べたいと思う。

総務省の「人口推計」によると日本の高齢化率は26.7%(2015年10月1日現在)だ。広野町の高齢化率は28.7%、私の住む南相馬市は31.9%と全国平均を上回る。意外かもしれないが、東京から100km圏内に位置する千葉県鴨川市の高齢化率は、なんと36.2%だ。
人口の約41%を高齢者が占める徳島県の三好市では、高齢者の減少により空き家が増加し、満床だった高齢者施設には空きが出ているという。

一方、都市部では、地方と比較して医療機関を経営する上での固定費が高い。政府による医療費の抑制・診療報酬減額が拍車をかけて、病院経営を悪化させている。例えば、東京築地の名門病院である聖路加国際病院で、常態化する医師のサービス残業が問題となり、労働基準監督署が調査をしたと言う。高い固定費と診療報酬の減額によって収入は減り、都市部にある多くの病院が経営難に陥っている。

つまり、地方における急速な高齢化と、同時に起きている高齢者人口の減少、都市部における高い固定費、さらには診療報酬の引き下げが引き金となり、医療は都会でも地方でも次第に崩壊しつつある。医療の抱える問題は、医師不足や看護師不足だけではないのだ。

民間が経営する病院であるにも関わらず、高野病院は震災以降、広野町の生活を支えてきた。だが、これ以上民間だけで経営するのは不可能だ。このまま常勤医が見つからなければ、広野町に住む住民のライフラインはなくなってしまう。住民が安心して暮らせるように、また広野町に戻って生活ができるようにするためには、個人にこの責任を負わせるのではなく、行政も支援をすべきなのではないだろうか。今の県や町の対応は、責任をなすりつけあっているようにしか見えない。

そんな中、24億円の総工費をかけて「県立ふたば医療センター(仮称)」※4が福島第一原発から12kmに位置する富岡町に建設される予定だ。誰も住んでいないところに建てることも理解しがたいが、双葉郡の避難指示が解除されれば、閉鎖する予定だという。高野病院をはじめ、近隣には建物としては十分機能しうる病院があるにも関わらず、そんなハコモノを作るのにこれほどの大金をかける意味があるとは到底思えない。

どうか、亡き院長が命賭けで守りぬいてきた地域医療を絶やさないでほしい。広野町に住む住民の命が危機にさらされることのないようにしてほしい。微力ながら、高野病院を支援する会の一員として最後まで応援し続けたいと思う。

※1 ホームページ(http://savepatientakano.sakura.ne.jp)

※2 Facebook ホームページ (https://www.facebook.com/savepatientakano/)

※3 クラウドファンディング (https://readyfor.jp/projects/hirono-med)

※4 県では、双葉郡の復興及び住民の帰還に向けた環境を整えるため、民間事業者が建設する施設を県が買い取り、県立ふたば医療センター(仮称)として整備する事業を実施予定。

参考 「上昌広と福島県浜通り便り」(http://japan-indepth.jp/?p=32530)
総務省、徳島県、広野町、日本医師会 のHP

追伸:4月以降の院長と常勤医が内定しました(2月2日現在)。しかしながら、高野病院には依然として解決すべき問題があります。資金と精神科医の問題です。

新しく来てくださる先生方の雇用を安定的に継続するためには、今以上のサポートが必要です。また、震災後、双葉郡の入院施設のある精神科病院は高野病院だけでした。4月以降の院長・常勤医が決まっても双葉郡で民間医療機関が経営を継続するのは難しいのです。「院長・常勤医」に関して,4月以降の見通しが立って来た今、改めてこの問題の本質的な議論がなされることを心から願っております。

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山本 佳奈 (やまもと かな)

1989年、滋賀県生まれ。四天王寺中学・高校卒業。滋賀医大卒業し、2015年4月から福島県の南相馬市立総合病院に初期研修医として勤務。著書に「貧血大国・日本」(光文社新書)がある。「医療ガバナンス研究所」にて医療システムを研究中。「高野病院を支援する会」の事務局の一人。

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【2】(1) 第233回J.I.フォーラム  2月23日(木) 開催

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島のくらしから考える

-淡路・奥尻・佐渡の魅力、生かし方-

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日本には7000弱の島があると言われています。そして多くの島には独特の伝統文化や歴史が多くありますが、住民がむしろその文化の魅力に気づいていないことが多いと言われています。

構想日本は、兵庫県淡路市、北海道奥尻町、新潟県佐渡市の3市町の、魅力探しのお手伝いをすることになりました。国生み神話で有名な淡路市、三平汁発祥の地である奥尻町、全国能楽舞台の1/3を持つ佐渡市。受け継がれてきた伝統はとても魅力的です。一方、阪神淡路大震災、北海道南西沖地震、台風による被害など防災面での共通課題もあります。

島の「くらし」の現地調査やインタビューの報告も交えながら、3人の市町長に語っていただきます。他の地域の魅力探しにも大いに参考になると思います。

◯日 時:2017年 2月23日(木) 18:30~20:30 (開場18:00)

◯会 場:アルカディア市ヶ谷  6階 「伊吹」 (千代田区九段北4-2-25)TEL 03-3261-9921

※場所にご注意ください

◯ゲスト:門 康彦 (兵庫県 淡路市長)

新村 卓実 (北海道 奥尻町長)

平野 秀樹 (学校法人 青森山田学園 本部長)

三浦 基裕 (新潟県 佐渡市長)

◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

◯主 催:構想日本

◯定 員:120名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

アルカディア市ヶ谷  2F レストラン

※フォーラムへのご参加は2月23日(木)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

HPからのお申し込みはこちら http://www.kosonippon.org/forum/index.php

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(2)《今後の構想日本の活動》

2017年3月4日(土)静岡県 浜松市「防災住民協議会」(全5回中の第5回)

今年度の構想日本の『事業仕分け・住民協議会・施設仕分け実施一覧』詳細は、以下のURLよりご覧いただけます。

2016年の事業仕分け、住民協議会、施設仕分け実施一覧

《その他》

2016年4月~隔週月曜日 京都大学経済学研究科・経済学部 特殊講義「公共経営論1・2」 (代表 加藤秀樹)

公共政策の各論を毎回ゲストの講義で進めています。これまでのゲストは、
株式会社もり 代表 原野守弘氏、内閣府 迎賓館長 別府充彦氏、一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー 代表理事 田中未知子氏、長岡京市長 中小路健吾氏、厚木市こども未来部長 小瀬村寿美子氏、元朝日新聞社 代表取締役社長 木村伊量氏、財務省 事務次官 佐藤慎一氏、株式会社マイファーム 代表取締役社長 西辻一真氏(構想日本メルマガ「農業の現場あるあるシリーズ」執筆者)、日本ポリグル株式会社 代表取締役会長 小田兼利氏、外務省 アジア大洋州局南部アジア部長 梨田和也氏、金融庁 検査局長 三井秀範氏(金融庁長官から急遽変更)、衆議院議員 岡田克也氏。

2016年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論」講義 (総括ディレクター伊藤伸)

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(3) Yahoo!ニュースオーサー 新記事投稿

Yahooニュースにオーサーとして新しい記事を投稿しました。ぜひ御覧ください。

代表 加藤秀樹

◇2016年12月28日 ヤフーニュース 日本にトランプ現象は起こるか(前編)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20161228-00065994/

◇2017年1月5日 ヤフーニュース 日本にトランプ現象は起こるか(後編)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20170105-00066261/

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(4) 今年の 構想日本「会員懇談会」はありません

☆毎年恒例の構想日本「会員懇談会」は、開催いたしません。

構想日本が誕生して20年がたちました。

そこで、20周年を記念した会を4月以降に開催しようと考えております。日程等詳細は、決まり次第ご連絡致します。どうぞ、お楽しみに。

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【3】<ご紹介>

「高野病院 支援 寄付募集」のお知らせ

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『地域医療を守るため原発事故後唯一留まった高野病院を支援します』
https://readyfor.jp/projects/hirono-med

東京電力福島第一原発事故後、唯一診療をつづけた高野病院。
高野病院が閉鎖されることになれば、双葉郡から病院がなくなってしまうことを意味します。

高野病院は一民間病院でありながら、事故後も地域の中で「社会的インフラ」として復興を支えてきました。生活に欠かすことのできない病院がなくなれば、安心して住むことはできません。住民の帰還も叶わなくなります。

行政は、民間病院を支援すると公平性を保つことができないと言います。

被災地において、住民の方々が安心して医療を受けられる体制を整えることは、真の復興を成し遂げるために必要不可欠なのです。

今回、「高野病院を支援する会」を発足し、ボランティア医師を全国から募るとともに、情報拡散に努めてまいりました。そして、地域医療の崩壊を防ぐために、「ふるさと納税制度」を利用した寄付募集を開始いたしました。

主な目的は、約3か月間の非常勤の医師の交通費や宿泊費の補助費用を算出するためです。目標金額を上回った部分は、広野町ふるさと応援寄付金事業の「健康で安心して暮らせるまちづくり事業」への、保健・福祉・医療体制の充実へ活用させていただきたいと思います。

引き続き皆様の温かいご支援の程、よろしくお願い申し上げます。

高野病院を支援する会は、高野己保理事長とともに、亡き院長が命賭けで守りぬいてきた地域医療が絶えることなく、存続することを第一に考え、引き続き行動をし続ける所存です。

高野病院を支援する会 事務局 山本佳奈

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