【No.816】「特ダネではないけれど(19) 国家戦略特区」 |新聞記者 松浦祐子氏|
2017.07.13

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J.I.メールニュース No.816 2017.07.13 発行

「特ダネではないけれど(19) 国家戦略特区」

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【1】<巻頭寄稿文>

「特ダネではないけれど(19) 国家戦略特区」

新聞記者     松浦 祐子

【2】<お知らせ>

(1) 第237回J.I.フォーラム  7月20日(木)

自分ごと化会議 第1弾  「都議会って本当に必要なの?」

(2) 第5期 現場みらい塾 開講中

1回だけの単発参加も可能です。

【3】<ご紹介>

(1) アジア初! シルコストラーダに認定! ~記者発表会のお知らせ~

(2) 中村敦夫のライフワーク 朗読劇「線量計が鳴る」

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【1】「特ダネではないけれど(19) 国家戦略特区」

新聞記者     松浦 祐子

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「国家戦略特区」が、安倍政権を揺るがしています。今、問題となっているのは、様々ある特区の中でも、獣医学部の設置を巡る問題です。

安倍首相の「お友達」が理事長を務める加計学園が、国家戦略特区で1校だけ開学が認められ、その選定過程の透明性や中立性、公平性が疑問視されています。
利害関係者である同学園の理事長を内閣官房参与(当時)に任命するなど、そもそもの行政のあり方として、初歩的かつ大きな瑕疵があると言わざるを得ません。

今後の国家戦略特区のあり方を考えていくためにも、選定過程の解明は不可欠です。ですが、今回は少し視点を変えて「国家戦略特区」を、政府の役割という観点から述べたいと思います。

日本は自由主義経済の国ですが、好き勝手に事業ができるわけではなく、様々な規制が設けられています。多くの場合、規制には何らかの守るべき利益があり、規制を撤廃するにあたっては、そのメリット、デメリットを考えることが必要になります。

私は規制には、大きく分けると二つあると思います。一つは、安心や安全のための規制です。建物の耐震性やスプリンクラーの設置といった規制などが代表例です。もう一つは、過当競争を避けるための「量」の規制です。

量の規制は、さらにビジネスに関するものと、公的な役割に関するものとに分けられます。
ビジネスに関するものですと、身近な話題では「大規模小売店舗法(大店法)」が思い出されます。大型スーパーが出店する際の規模や営業時間などを規制していた同法が撤廃されたことが、地元の古くからの商店街をシャッター通り化させた一つの背景であることは否めません。もちろん現代の車社会で、多くの駐車場を保有するショッピングセンターがある方が、消費者にも便利で、地域の活性化につながっているという意見も当然でしょう。

他にも「道路運送法」の改正でタクシーの台数規制が撤廃されると、タクシーが増えすぎ、結局、1人あたりの運転手の収入が減ってしまい、再び台数を減らそうということにもなりました。

とはいえ、これらの分野は民間事業者による純粋なビジネスの分野で、規制が撤廃されたからといって、その事業者に補助金が出るなどの政府による支出(歳出増)は原則としてありません。

一方で公的な役割に関わる教育や医療などの分野では、設置が認められれば事業者(設置主体)に対して、助成金や補助金、保険制度の下での財政支援が行われることになります。

私立の学校が増えれば増えるだけ、政府の私学助成の予算は増やさざるを得ません。国家戦略特区では、獣医学部とは別に千葉県成田市で医学部の新設が認められ、開学しました。

医学部の場合は、1人の医師を育てるための費用が多額になるため、国からの補助額が大幅に増えるだけでなく、将来の医師数増加、医療保険財政にも影響を及ぼすことになります。最終的には、国民の負担増につながりかねません。

この公的な役割に関わる「量の規制」というのは、政府の役割なのです。
もちろん世界を見渡してみても、政府の関与の度合いには強弱があります。日本はこれまで、教育、医療・介護、住宅の分野では、民間の力を頼りにし、政府の関与は相対的に見れば弱い国だったと思います。その結果人口減少が進む中で、今後、医療機関や教育機関、住宅の過剰が問題になっていきます。すでに地方では病院があっても周囲に住む人が少なくなったり、私立大学の5割超では定員割れとなっていたりします。空き家問題も顕在化しています。

獣医学部の設置を巡って批判を受けた安倍首相は「中途半端な妥協が国民的な疑念を招いた」として、「どんどん獣医学部の新設を認めていく」との方針を打ち出しました。獣医師を巡る問題は、量の規制を撤廃すれば、解決するものなのでしょうか?

今、議論する必要があるのは、将来の人口減少を見据え、この国で生活していくために必要なインフラとは何か、ということだと思います。それは国家戦略特区という舞台で議論する話ではなく、政府全体で、真っ正面から議論すべき話だと思います。

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松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)

1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当、新潟で県政取材などを経て、今は内閣府担当。

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【2】(1) 第237回J.I.フォーラム  7月20日(木)

自分ごと化会議 第1弾  「都議会って本当に必要なの」

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オリンピックや豊洲移転で都議会は、どんな役割をしてるのか。

私たちに実感できません。

都議会はじめ地方議会や議員について、これまでに無作為に選ばれて政治・行政に参加した経験のある住民などに徹底討論してもらいます。

◯日 時:2017年 7月20日(木) 18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:アルカディア市ヶ谷 4階「鳳凰」千代田区九段北4-2-25  TEL.03-3261-9921

※場所にご注意下さい

◯登壇者:相川 俊英 (地方自治ジャーナリスト)

津田 大介 (ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)

原田 謙介 (NPO 法人 YouthCreate 代表理事)

白井 亨  (小金井市議会議員)

鈴木 太郎 (横浜市会議員)

過去、無作為に選ばれて、行政の取り組みに参加した 行方市・富津市・伊勢原市などの住民(10名程度) 他

◯主 催:構想日本

◯定 員:100名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

※今回は懇親会はございません。

※フォーラムへのご参加は7月20日(木)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

HPからのお申し込みはこちら https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php

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「自分ごと化会議」とは、構想日本が続けてきた無作為に選ばれた住民が政治・行政に参加する会議の総称です。

トランプ大統領も、豊洲への市場移転、共謀罪法案も政治が「他人ごと」になっていることの現れです。

そこで7月のフォーラムは、政治の「自分ごと化」を全国に広めるための活動の第一弾として行います。

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<今後の日程>

8月のフォーラム は 8月21日(月)「大麻についてきちんと勉強してみよう」 日本財団ビル2階

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(2)【 第5期 現場みらい塾 受講生募集中 】

各回単発の申し込みもできます!

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今年度も現場みらい塾を開講しています。

現場みらい塾は、ハウツー的なスキル中心の従来型の自治体職員向け研修ではありません。自治体のどの仕事にも応用できる「知恵の出し方を身につけるトレーニングの場」です。

過去4期の特徴として、

・自治体職員を中心としながらも多様な参加者がいる(地方議員、メディア、民間企業など)。

・受講者がその後プログラムの内容を自分の自治体で実践するケースが多い。

・OB・OGが翌年度以降も参加する比率(リピート率)が高い。

などがあります。
行政職員を中心に、議員や民間企業等で働く人などが一緒に半年間議論し、多様なものの見方と知恵の出し方を学び合うゼミ形式のプログラムです。

さらに今期は、NPO法人「NPOサポートセンター」の協力で、現場で活躍するNPO関係者にも参加してもらうことで、同じ事象をさらに幅広い視点から見ることによる多様性の涵養をねらいます。

受講生はこれまでに約100名。問題意識の高いOB・OGとのネットワークも大きい財産です。
自治体職員以外の方も歓迎です。是非お申込みください。

参加受付やプログラム等の詳細は、下記のURLから現場みらい塾ホームページをご確認ください。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/project/detail.php?id=739

【 第5期プログラム概要 】

第3回:7月29日(土)10:00~18:00
講義:「共助の社会づくりと自治体の役割」
深尾 昌峰 〔(公財)京都地域創造基金理事長・龍谷大学政策学部准教授〕
実践:「模擬事業仕分け2/チームで体験する」
実践:「事業シート・プレゼンテーション/発表から体得する」
伊藤 伸  〔構想日本 総括ディレクター〕

第4回:8月19日(土)13:00~18:30、20日(日)10:00~16:00
実践:「グループディスカッション・プレゼンテーション」
伊藤 伸  〔構想日本 総括ディレクター〕
講義:「 地方創生の実態 」
横山  忠始〔香川県 三豊市長〕
講義:「 自治とは何か 」
福嶋 浩彦 〔中央学院大学 教授・元消費者庁長官・元我孫子市長〕
実践:「締めくくりディスカッション」

【会  場】
協働ステーション中央(東京都中央区日本橋小伝馬町5-1 十思スクエア2F)
http://npo-sc.org/

※講師や場所は情勢等により変更となる場合があります。また、講義テーマはいずれも仮題です。

【応募資格】
地域をよりよくしたいという情熱を持ち、地域の課題解決と未来創造のために、自ら考え行動する意志のある人

【募集人員】 50名程度

【参 加 費】  各回:10,000円(税込)※旅費・食費等は含まれません。

【お問い合わせ】

構想日本:田中、永由 TEL:03‐5275‐5607、Email:info@kosonippon.org

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【3】<ご紹介>

構想日本が注目している活動をご紹介いたします。

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(1) アジア初! シルコストラーダに認定! ~記者発表会のお知らせ~

構想日本が応援している一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリーの記者会見のご案内をいたします。

瀬戸内サーカスファクトリーは、フランスから始まった“空間を使った舞台芸術”とも言える現代サーカスを、日本の地域文化のテコ入れや地方から世界への日本文化発信に生かそうという活動をしている団体です。

この瀬戸内サーカスファクトリーが、EU欧州委員会公式プログラムであるヨーロッパ現代サーカスネットワーク「シルコストラーダ」正式メンバーに、アジアで初めて認定されました。これに関する記者会見を下記の通り行います。

シルコストラーダ会員認定のニュースと瀬戸内サーカスファクトリーについて、そして今年来日するフランスの大型カンパニー、XYの日本ツアーについて以下の通り記者発表を行ないます。

<記者発表会概要>

【日 時】7月24日(月)午後3時~4時(質疑応答含め1時間を予定)

【会 場】アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ

〒162-8415 東京都新宿区市谷船河原町15
TEL:03-5206-2500 FAX:03-5206-2501

【登壇者】 ご挨拶:アンスティチュ・フランセ東京
田中 未知子(瀬戸内サーカスファクトリー代表/現代サーカスディレクター)
酒井 淳美(世田谷パブリックシアター)

【お問い合わせ】一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー
TEL: 080-2977-5469 または 080-3265-8505(田中)

◆ご来場ご希望の方は、お名前・ご所属・メールアドレスをお知らせください。
瀬戸内サーカスファクトリー宛:setouchicircusfactory@yahoo.co.jp

※瀬戸内サーカスファクトリーのホームページでも詳細をご覧いただけます。
http://www.setouchicircusfactory.com/index.html

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(2) 中村敦夫のライフワーク 朗読劇「線量計が鳴る」

原発の町で生れ育ち、原発で働き、原発事故ですべてを奪われた。
これは天命か、それとも陰謀か?老人は、謎解きの旅に出る。

★★★ー上演スケジュールー★★★

東京公演
7月16日(日) 18時開演
7月28日(金) 16時開演
笹塚ボウル4階ホール  渋谷区笹塚1-57-10(京王線笹塚駅前2分)
全自由席・2,000円
*予約制、70席前後の会場につきお早めのご予約をお待ちしております。
ご予約・問い合わせ
笹塚ボウル 03-3374-1300
mail info@sasazukabowl.com

青森県 青森公演 8月11日(金)13時30分開演 八戸市公民館ホール
前売券2,000円(当日券2,300円)全席自由 (高校生以下は無料)
問い合わせ 核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団 0178-47-2321

広島県 福山市公演 9月9日(土)時間 未定 会場 未定
問い合わせ 福山市上演委員会

広島公演  9月10日(日)14時開演 本願寺広島別院 共命ホール
問い合わせ 広島上演委員会

この外、十数都市で、上演委員会設立が準備されています。

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<報道されない FUKUSHIMAの今> 今週はお休みしました。

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