【No.88】金融問題の根底にあるもの
2003.03.07

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金融問題の根底にあるもの
JIメールニュースNo.88  2003.3.7
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■■ 目次 ■■
1.《日本の何がいけないのか》金融問題の根底にあるもの
構想日本 政策アナリスト
近藤 学
2.《J.I. Action Summary》
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1.《日本の何がいけないのか》金融問題の根底にあるもの
構想日本 政策アナリスト
近藤 学
私は、この2月から構想日本で政策アナリストとして活動しています。
以前、銀行系シンクタンクに9年間、籍を置いていましたが、今でも印象
に残っていることがあります。それは、どんなに遅くまで仕事をしても、
仕事場を出るときに隣の銀行本部のビルを見ると、明かりがついていたと
いうことです。銀行員は朝が早いので、かなりの長時間労働になるでしょ
う。それくらい懸命に働いているにもかかわらず、衆知のとおり、銀行は
ひどい状況です。なぜなのか? 銀行の仕事の中身とやり方がおかしいか
らとしか考えられない、と私は当時から感じていましたが、その思いは今
でも変わっていません。
銀行の仕事がどのようにおかしいのかを考えていくとき、私がシンクタ
ンクに出向する以前、銀行員だった時代に当時の上司が発した言葉を忘れ
ることができません。彼は「銀行員の仕事は事務だ」と自信に満ちた風に
断言したのです。その人はその後、出世の階段を駆け上り、最後は副頭取
にまでなりました。
銀行というところは確かに忙しいところです。ただ、その忙しさは本物
の忙しさではありませんでした。あまり深く考えなくてもよい膨大な案件
を目の前で淡々と事務的にこなす、そういう類の忙しさです。ごく一部を
除いて、多くの銀行員がそのパターンに慣れきってしまったことが銀行の
根っこを腐らせたと私は思っています。
1980年代後半、私も含めて銀行員はバブルに踊りましたが、それは銀行
員が物事の本質を深く考えず、安きに流れるようになった必然の結果でし
ょう。その後、バブル崩壊によって経済全体のパイは縮み、さらにまた、
今後は超高齢社会に突入するのでパイはさらに縮みそうだという考え方
が世間を覆っています。銀行員だけでなく、多くの日本人が立ちすくんで
いる、言いかえれば、嵐が過ぎ去るか神風が吹くのを待っているのではな
いでしょうか?
ノーベル賞を受賞した小柴昌俊さんは、「勘の働きを大切にしてほしい。
勘を磨けば当たりが良くなり必ず成功に結びつく。勘を磨くには常日頃か
ら深く考えることが必要だ」と述べています。考えることについては、
シンガーソングライターで銀行員でもあった小椋佳さんが、「じっくり
考え事をすることがこの四半世紀、僕だけではなく、みんなできなかっ
た」と言っています。
私は、物事を考え抜く力が弱くなったことが、日本がバブルに溺れそし
ていま沈みつつある大きな原因ではないかと思っています。
どうすればこの閉塞状況から抜け出せるか? 私はゴリゴリの競争原理
主義者ではありません。むしろ競争の弊害を懸念してきた方です。しかし
最近では、これまで聖域とされてきた分野も含めて、競争をもっと導入し
ないとどうにもならないと思えてきました。
競争で生き残ろうとする際には、これまでの行動パターンで本当にいい
のかを、個人個人が本気で考えざるを得ないからです。
ただ、競争を導入するといっても、それによってムダを削り、カネを浮
かせるということを第一の目的にしてはいけません。大切なのは、真の競
争によって民のアウトプットの「質」を引き上げるということです。いま
問題になっているデフレも、世界的に見て日本のアウトプットの質が相対
的に下がっているから巻き込まれているのでしょう。そこから脱却するた
めには、まず個々が考え抜くことが必要です。それは、自分を見つめ直す
という意味で“自分との競争”でもあります。
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2.《J.I. Action Summary》
■構想日本の2月の主な活動状況■
●政策プロジェクト
(1)国と地方(税財政改革)
提言づくり
・県の事業仕分けの結果をベースに、税財源配分、補助金事業、地
方交付税制度に関する改革案をパッケージとして作成中
キャンペーン
・2/26:衆議院予算委員会の公聴会にて、「市町村合併」と
「国と地方の税財政改革」との関係について意見陳述
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=177
(2)国会議員アンケート
2月上旬より、「市町村合併」に関するアンケートを実施中(「構想
日本」、「提言・実践首長会 合併部会(議長:逢坂二セコ町長)」、
「(社)経済同友会」の共同アンケート)
・『現在の市町村合併の進め方』に対する意見は、「慎重派」がトッ
プ(36%)、あとに「反対派」(31%)、「積極派」(30
%)が続く(2月末時点)
http://db.kosonippon.org/enq/
(3)公益法人改革
民法34条改正を含む、「非営利活動法人制度」の抜本的な改革に向
けたキャンペーン
・「NPO・公益法人制度改革info-net」スタート(制度改革に関す
る情報を、公益法人やNPO法人、NPOの方々に発信)
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=175
(4)公会計
「地方公会計研究会」第14回会合開催(2/24)
・「セグメント財務諸表の作成/活用方法、同財務諸表による内部統
制のあり方」など
(5)エネルギー戦略
エネルギー政策の意思決定プロセスに関する提言の最終まとめ(近々、
ホームページなどで公表)
●ネットワークづくり
○環境
第2回「自治体への環境政策に関するアンケート」結果公表
・43の都道府県、171の首都圏市区町村から回答
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=162
上記のほか、「年金制度改革」、「医療制度改革」、「政治資金制度改
革」などの政策プロジェクトが進行中。
詳しくは、 https://www.kosonippon.org/wp-managerまで。

(文責:政策担当ディレクター 冨永朋義)
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