【No.896】「特ダネではないけれど(29)統計不正」 |新聞記者 松浦祐子氏|
2019.02.07

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構想日本メールマガジン【No.896】 2019.2.7 発行

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<目次>

【1】活動ニュース

(1)第6期 現場みらい塾 まだ間に合います! 2月9日(土)~
(2)「自分ごと化会議in松江」(最終回) 原発問題解決の糸口がここにある

【2】2019年1月の主な活動報告 政策実現活動、新聞・テレビ等メディア掲載 その他

【3】自治体通伸 NEW!

(1)茨城県古河市 老朽化施設の今後を考える

【4】ご紹介

(1)「おうちゃんを救う会」より 御礼文書

【5】巻末寄稿文

「特ダネではないけれど(29)統計不正」

新聞記者   松浦 祐子

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【1】活動ニュース

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(1)第6期 現場みらい塾 受講生募集中

現場みらい塾は、ハウツー的なスキル中心の従来型の自治体職員向け研修ではありません。
自治体のどの仕事にも応用できる「知恵の出し方を身につけるトレーニングの場」です。
行政職員を中心に、議員や民間企業等で働く人などが一緒に議論し、多様なものの見方と知恵の出し方を学び合うゼミ形式のプログラムです。

プログラムの詳細、お申し込みは、下記のURLからご確認ください。
現場みらい塾ホームページ https://www.kosonippon.org/wp-manager/project/detail.php?id=793

【日程】
第1回:2月 9日(土)10:00~18:00
第2回:2月23日(土)10:00~18:00
第3回:3月 9日(土)13:00~18:30、10日(日)10:00~16:00

※各回、1日のみの受講も可能です。

【主な講師陣】

荒井英明〔厚木市 産業振興部長〕
大西 健丞〔特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン 代表理事兼統括責任者〕
福嶋浩彦〔中央学院大学 教授・元消費者庁 長官・元我孫子市長〕
矢田 明子〔NPO法人おっちラボ副代表理事、Community Nurse Company株式会社代表取締役〕ほか

【お問い合わせ】
構想日本:田中、永由 TEL:03‐5275‐5607 E-mail:info@kosonipon.org

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(2)「自分ごと化会議in松江」 2月24日(日)第4回(最終回=とりまとめを行います) 島根県 松江市

★特徴★
1.住民団体主催の住民協議会は全国初!!
2.県庁所在地に原発を持つ松江市民が、『原発』を賛成か反対かではなく、自分のこととして考えることが目的。
3.「自分」「地域」「市・県・国」「中国電力」ができること、日常生活で感じる身近なことを基に取りまとめ、各所に提案を行う。

【開催日時】第4回:2月24日(日)13:30~16:30(予定)

【会  場】松江市市民活動センター 交流ホール

【主  催】自分ごと化会議in松江実行委員会

「真剣に一般公開の討論をするべきだと思う」

経団連会長中西宏明氏(日立製作所会長)が、年初のインタビューで原発について発言したひとことです。

既にその先を行く人たちが、ここにいます。明日につながる「現場」を、その目で見て、実感して下さい。

▲ 2018年度の事業仕分け、住民協議会、施設仕分け実施一覧 ▼
https://www.kosonippon.org/wp-manager/blog/?page_id=1447

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【2】1月の主な活動報告

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(1)政策実現活動

1月12日 岡山県 新庄村議会発 第2回村づくり自分ごと化会議(住民協議会)
1月13日 島根県 第3回自分ごと化会議in松江(住民協議会)
1月19日 福岡県 第4回大刀洗町住民協議会
1月20日 茨城県 古河市市民判定人説明会

※その他、首長や自治体との打ち合わせ等 17件

< 講演 (代表 加藤秀樹) >

1月26日 京都大学経済学部百周年記念東京フォーラム 新春第一回経済交流会
講演会とパネルディスカッション「今後の日本経済の課題とあり方」(コーディネーター)

(2)テレビ等メディア掲載

1月 8日 列島をあるく ■統一地方選を前に 地域の課題 住民が率先 「協議会」設置、活発に議論 朝日新聞
1月10日 問う2019 論点の現場から(3) 分断加速 民主主義はどこへ 突破口求め AI活用や議論 朝日新聞
1月31日 キーパーソンに聞く 「関係人口」、地域見守る力に 明治大教授・小田切徳美氏 地方行政(定期刊行物)
1月31日 これからのODAに何が必要か 有識者懇談会提言のメッセージ 外務省「ODAに関する有識者懇談会」座長 伊藤伸 外交 Vol.53(外務省発行)

(3)その他

< 講義 >

2018年10月~隔週金曜日 京都大学経済学研究科・経済学部 特殊講義「公共経営論2」(後期)(代表 加藤秀樹)

公共政策の各論を毎回ゲストの講義で進めます。
これまでのゲストは、玉置半兵衛氏(株式会社半兵衛麸)、井上裕之氏(内閣府審議官)、宮崎稔氏(学校と地域の融合教育研究会会長)、杉本志乃氏(一般社団法人Arts and Creative Mind代表理事)、中村桂子氏(JT生命誌研究館館長)、蓮舫氏(参議院議員)。

2018年9月~毎週木曜日 法政大学 法学部「NPO論 II」(総括ディレクター 伊藤伸)

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【3】自治体通伸 NEW!

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(1)茨城県古河市 老朽化施設の今後を考える

解決策は、地元住民の言葉の中にあります。
全国で問題となっている公共施設の過剰供給や老朽化。
今回は、茨城県古河市の様子を、ぷち報告いたします。

こちらからどうぞ → https://www.facebook.com/shin.ito.9235/posts/2129490420504131

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【4】ご紹介  「おうちゃんを救う会」より

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私たち「おうちゃんを救う会」は、上原旺典くんの心臓移植手術実現のため募金活動をしており、メールマガジン893号でご支援をお願いさせていただきました。

そしてこの度、海外移植手術のために必要な資金(3億5千万円)に目処がつき、募金活動を終了させて頂きましたことをご報告いたします。

たくさんの皆様にご寄附と温かい応援コメントを頂きました。この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

今後の渡航、移植手術、帰国等に関しては、当会のホームページにて随時ご報告して参ります。皆様におかれましても温かく見守って頂きたく、お願い申し上げます。

おうちゃんを救う会 事務局 (代表:小川昌俊)

「おうちゃんを救う会」公式サイト=https://www.genki-o-chan.com/
※メールマガジン893号は、読者様からのご指摘を反映し、HP分は修正版に差し替えました。https://www.kosonippon.org/wp-manager/mail/detail.php?id=911

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【5】寄稿文 「特ダネではないけれど(29)統計不正」

新聞記者   松浦 祐子

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厚生労働省の「毎月勤労統計」に加えて、次々と新たな不正が見つかり、問題は拡大するばかりです。まさに、日本の統計への信頼性がゆらいでいます。

毎月勤労統計というのは、総務相が特に重要だと定める国の56の基幹統計の一つです。厚労省が毎月、都道府県を通じて労働者一人当たりの賃金額や前年同月比での変化率などを調べて公表しています。この統計の東京都調査分で、本来は従業員500人以上の事業所はすべて調べないといけないところ、実際には2004年から3分の1ほどの事業所だけを抽出して調べていたというのが、不正の主な内容です。

どうしてこのようなことが始まったのか。今わかっているのは、多くの企業(事業所)が東京に集中している中で、調査を実際に行う東京都の事務負担が重くなり、それを軽減しようとしたらしいということです。抽出調査は一般的に行われていることで、毎月勤労統計でも499人以下の事業所に対しては、抽出調査で行われています。正しい手続きを取れば、抽出調査をすること自体が悪いことではありません。

今回の問題は全数調査から抽出調査への変更手続きも取らず、対外的には「全数調査」と虚偽の公表をしていたこと。また、抽出調査ならば当然行われなければならない「復元」作業が行われなかったことが、不正とされるゆえんです。復元とは、抽出調査をした場合に、全数に近づけるように補正を行うことです。

雇用保険や労災保険などの給付水準は毎月勤労統計をもとにして決まることになっています。ところが、復元が行われなかったことで、賃金が、低く算出され給付額が少なくなった人が続出したのです。追加で給付が必要な人の数はのべ約2015万人、その給付に必要な経費は、事務費なども含めて総額795億円。政府は、この経費を捻出するために、いったん閣議決定した2019年度当初予算案のし直しに追い込まれました。

この大きな額を見ると、つい「責任者は誰だ!!」と犯人捜しをしたくなってしまうものです。

もちろん、厚労省に大きな非はあります。ただ、昔は、調査のあり方が厳密に定められておらず、統計法に基づく調査計画で「500人以上は全数」と明確に定められたのは2017年のことです。

「復元」の作業が行われなかったことについては、調査手法を変える担当と、集計を行うシステム担当が縦割りで仕事をし、連携が取れていなかったことによるミスが考えられています。

そのような意味で今回の不正は、統計の調査手法を変えることの重大性の認識の低さと手続きの不備、統計的な処理のミスが重なってしまったという感じがします。とはいえ、贈収賄事件のように、厚労省の誰かが得をするというものではありません。原因を探ることは必要ですが「犯人探し」だけをするのではなく、組織として何が足りなかったのかを追及することの方こそ重要だと思います。

不祥事というものは、その組織の弱点を際立たせるものだと思います。

今回の問題で、強く感じるのが、厚労省の自己解決力のなさです。それが統計だけでなく、行政全体への不信感を国民に植え付けてしまったと言わざるを得ません。

問題の公表も後手後手でした。少なくとも昨年12月13日には、総務省の統計委員会の委員長から問題が指摘され、同20日には根本匠厚労相にも報告されています。しかし、何も発表されず、最初に問題を明らかにしたのは同28日の新聞報道。その時点でも、厚労省幹部は「そんなに騒ぐ話なのか」といった反応で、だんまりを決め込み、根本厚労相が問題を認めたのは年が明けて1月8日になってからでした。

厚労省自らが問題を発表し説明するタイミングは何度もあったのに、外部から指摘を受けて、やっと公表するということが続いています。国民に知らせるべき情報が、適切に説明されず、「厚労省は何か隠そうとしているのではないか」と感じざるを得ませんでした。

そして何より根深いのが、厚労省の中で不正に気づいていた職員は複数いたのに、その時点で公表しなかったため改善に向けての取り組みを始めることができず、不正が放置されてきた事実です。気づいた職員が言い出せない雰囲気があるのではないか。定期的に業務内容をチェックすることができていないのではないか。そもそも統計というものを軽視してきた上に、実務は統計のプロと言われる専門職の人々に任せっきりになっていたのではないか。いずれも統計だけでなく、どの政策でもあり得ることです。長年、チェック機能が働かなかった点は真剣に体制を整え直さなければ、同様な不正の再発は防げないでしょう。

日本の少子高齢化は深刻です。そして、国民からの信頼がなければ成り立たない社会保障を担う役所が、また信頼を失っていくのを見ることに、忸怩たる思いがします。せめて国会の議論では、トカゲのしっぽ切りで終わらせず、本質的な厚労省のガバナンス(組織統治)のあり方を徹底的に議論してもらいたいと思います。

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松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)
1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当、新潟で県政取材、内閣府担当を経て、今は再び厚生労働省担当。

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(編集後記)

勤労統計の不正、障害者雇用の水増し、外国人労働者の政府調査データの誤り。
挙句の果てには、国民の「知る権利」を無視した、首相官邸から新聞記者への質問制限の申し入れ。
「無理が通れば道理が引っ込む」世の中には、ならないようにしたいですね。

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