【No.953】シリーズ 報道されない福島の現実(6)~農地の原状回復訴訟 意見陳述 2020.02.28~ |農地の原状回復訴訟団・団長 鈴木 博之氏|※読者の声1名※
2020.03.26

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構想日本メールマガジン【No.953】 2020.03.26 発行

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<目次>

【1】各地からの現場レポート

岡山県 津山市「津山自分ごと化会議」【結果報告】

【2】お知らせ

~辰巳 琢郎氏 舞台のお知らせ~

【3】「JUDGIT!」で検索!

東京オリンピックや原発を「JUDGIT!」で検索したら?!

【4】巻末寄稿文

シリーズ 報道されない福島の現実(6)~農地の原状回復訴訟 意見陳述 2020.02.28~

農地の原状回復訴訟団・団長 鈴木 博之

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【1】各地からの現場レポート

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津山市「津山自分ごと化会議」【結果報告】

津山市で「プール施設のあり方」をテーマに住民協議会を開催しました。

4回の議論を経て、4つの提案をまとめた提案書が完成し、津山自分ごと化会議委員から市長へ提出しました。

提案項目の内容は、市営プールと学校プールの双方のあり方を見直す。子どもたちが安心して遊べる場を中心としながら地域が元気になる環境の整備を検討する。など。

詳細は下記、URLよりご確認ください。

https://www.city.tsuyama.lg.jp/common/photo/free/files/12262/tsuyama_jibungoto_report.pdf

【意見・感想等より(抜粋)】

・色々な意見があるんだなあ…と思い勉強になりました。意見が初回と変わった人がいたり、私も考えが揺らいだりしました。人の意見を聞くことは大切なことですね。

・民間で出来る事と、行政が主体的に取り組む事業を今後は分けて考えるべきである。箱物を作るのであれば、後の維持費を考えて取り組んでほしい。

・中高生などの参加者も、しっかりした意見をもっており、津山の今後に随分参考になると思います。

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【2】お知らせ

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~辰巳 琢郎氏 舞台のお知らせ~

「愛する母、マリの肖像」

●日 程 2020年3月27日~29日
●場 所 大阪:ABCホール

☆料 金(全席指定)前売:5,000円 当日:5,500円

時間など詳細は チラシ 表 https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2019/mail/omote.jpg
チラシ 裏 https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2019/mail/ura.jpg

辰巳氏、丹下氏インタビュー http://entre-news.jp/2020/02/63528.html
丹下氏、古川氏インタビュー https://www.confetti-web.com/sp/feature/article.php?aid=757

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【3】「JUDGIT!」で検索!

「東京オリンピック・パラリンピック」や「原発」、「感染症対策」などを「JUDGIT!」で検索してみよう!

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「JUDGIT!( https://judgit.net/ )」が、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構 (VLED) から、2019年度のオープンデータ・ビッグデータに関する優れた取り組みとして、最優秀賞をいただきました。

その『JUDGIT!』を使って、国がどんな政策をしているか、「原発」「オリンピック」などのキーワードで検索をしてみよう!

まずは、こちらへアクセス → http://judgit.net/
興味のあるキーワードを入れるだけ!

・どなたでも、手軽にキーワード検索が出来ます。
・国が行う5,000以上の事業の「金額」「支出先」などが書かれたシートを見られます。

例:キーワード「東京オリンピック」で検索すると

☆文部科学省  ナショナルトレーニングセンターの拡充整備 https://judgit.net/projects/2680

●成果目標及び成果実績(アウトカム) 夏季オリンピック競技大会において過去最高の金メダル獲得数を目指す

☆文部科学省  国立アイヌ民族博物館の施設整備 https://judgit.net/projects/2753

●成果目標及び成果実績(アウトカム) 国立アイヌ民族博物館の工事出来高

例:キーワード「原発」で検索すると

★復興庁  農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発 https://judgit.net/projects/2604

◯事業の目的(抜粋)

東京電力福島第一原発事故収束後に農業者がふるさとへ帰還し、営農を再開できるよう、高濃度汚染地域での土壌除染作業方法や除染作業により生じる汚染土壌の減容・処分方法、農地・集落に隣接する森林からの放射性物質の拡散防止技術、汚染された作物や雑草等を安全に保管するための減容・安定化技術を開発。

など、たくさん出てきます。是非、気になることを検索してみてください。

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【4】シリーズ「報道されない福島の現実(6)~農地の原状回復訴訟 意見陳述 2020.02.28~」

農地の原状回復訴訟団・団長 鈴木 博之

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3.11から始まる本件事故から実に9年が経とうとしています。

私は、福島地方裁判所遠藤裁判長らの判決を何度も読みましたが、未だにその内容を理解することができず、悶々とした日々を過ごしています。

福島地裁の判決では、「放射性物質は土地と同化している」ということでしたが、私は一農家であり、判決に記載されている法的な「同化」の意味が理解できません。まず、裁判所の言う「同化」の意味がどのような意味なのかを、ごまかすことなく、きちんと説明していただきたいと思います。

次に判決では、農作物が「出荷できているから、妨害はない」と言うことでしたが、私たち農家の生計は、農作物を栽培し、販売して、その代価をいただくことで成り立っています。その意味で、いくらで売れるかは重要ですし、買主やその子供たちに「おいしい」と食べてもらうことも重要です。

私たちは、本件事故後はこれまで以上に頑張って農作物を作っていますが、単価は低く、消費者を笑顔にできない農作物しか作れません。そのような農地であっても「農作物が出荷さえできていれば、妨害はない」というのは、誰が考えてもおかしいと思います。

さらに、「自分で客土工事し、後日被告に請求する方法もある」とおっしゃいますが、工事にはお金がかかります。私にはそのお金を準備できる蓄えがありません。そこで、日本政策金融公庫福島支店に行ってきました。

同公庫は、「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して、種々の手法により、政策金融を機動的に実施する」ことを基本理念とする金融機関であって、民間金融機関よりも融資のハードルが低いため、ここで借りられなければ、どこの銀行も貸してくれるはずはありません。

私は、客土工事のための費用を、公庫から借入れすることが可能かを相談しました。その結果、「当庫が取り扱ってる「スーパーL資金」(農業経営基盤強化資金)によって、客土に必要な費用を、農地改良・造成費用として貸すことは制度としてありえます。ただし、借手の保有財産の多寡にもよりますが、一般的に言って、1反歩(990平米)当たり、50万円、100万円を超えるような客土費用をお貸しすることは、借手の返済可能性という観点から考え難しいです」と伝えられました。

私は現在、財産のほとんどが担保に入っています。また、圃場整備事業としてなされる土地改良でも、1反歩(990平米)当たり、約270万円かかるとされていますから、それよりも多い金額を要するであろう客土費用を、借りられるはずがありません。

このように、私たちが自ら原状回復作業を行い、その費用を後日被告東電に請求することは極めて困難であって、「自分で客土工事し、後日被告に請求する方法もある」という福島地裁の判断は、私たち被害者に対して「被害を甘受しろ」ということと同義であり、画餅以外のなにものでもありません。

一方で、行政が、住宅以外の場所でも、除染作業を行っています。

1)自衛隊の郡山駐屯地や大滝根山分屯基地等では空間線量を30mメッシュで測定がなされ、空間線量0.23マイクロシーベルトにするための除染工事がなされています。
2)福島市にある福島県営あずま運動公園でも、前記自衛隊基地における除染に準じた除染工事が行われています。

これらは、いずれも行政が除染の必要性や公益的価値に鑑みて行ったものだと思います。

しかし、国内の農業生産の基盤である私たちの農地も、農地法第1条において、

1】現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ
2】地域における貴重な資源である

と記載されていることからも明らかなとおり、極めて高い公共性を有しています。その意味で、自衛隊駐屯地や県民の運動公園と同様に、私たちの農地が除染できない理由はないはずです。にもかかわらず、現在行政によって行われている除染作業は、特措法に基づき、あくまで「応急対策」として優先順位に基づいて行なわれているため、農地の除染は、自治体の判断に委ねられている状況です。

実際、私が住んでいる大玉村は住宅地の除染は行いましたが、農地については塩化カリウム散布による放射性物質吸収抑制の対策しか行わず、今後農地除染は行わないことを明言しています。それ故、私たちとしては東電に対し、私たちの農地を元に戻してほしいと求めるしか方法はないのです。

ところで、東電のコンプライアンス欠如と不誠実さは、酷いものです。

東電は原子力事業者として、原子力災害特別措置法第3条に基づき、原子力災害拡大の防止及び原子力災害の災害復旧に関し誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有す。と規定されていますが、原災法10条に基づく、いわゆる10条通報を適切に行わなかったために、初動対応が遅れ、住民たちは避難等において避けられた被曝を余儀なくされました。

また、東電の社長であった「小早川智明」氏は、2017年8月25日に、原子力規制委員会で、「風評被害の対策について、誠意と決意をもって取り組んでまいります。」と宣言していますが、それは口だけなのでしょう、現場にいる私たち農業者が実感できる施策は何もありません。

さらに、昨年の台風19号により阿武隈川は氾濫し、その結果、堆積汚泥から除染対象物質であるセシウムが検出されています。後始末の現場では、家族総出で、またボランティアの若者・女性・子供が軽装で泥まみれになって作業していました。

私が耕作する水田にも濁水が流入したため、調査分析してもらったところ700~800ベクレルのセシウムが検出されました。「原子力災害の拡大防止に関し誠意をもって必要な措置を講じなくてはならない」東電は、福島県民に対しどのような「注意喚起」を行ったのでしょうか? 私の知る限り、行っていません。

この間の東電の対応からは、本件事故を引き起こしてしまった事を踏まえた「誠意」が、一切感じられません。東電は「一歩前に出て」、誠意ある対応をすべきです。

東電は、原発安全神話をばら撒いた上、自らの責任を果たさず、福島第一原子力発電所を爆発させました。私たちは、何も悪くありません。にもかかわらず、誠意ある後始末をしようとしない被告東電を、裁判所が助ける必要は、まったくありません。

仙台高裁の裁判長並びに裁判官各位におかれましては、「司法の本来あるべき姿」を示し、子や孫にも誇れるような、判決を下した頂きたいと思います。

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(編集後記)

福島のJヴィレッジは「復興五輪」聖火リレーの出発地点、今日出発の予定でした。
そのJヴィレッジ、東京電力は「施設返還の際に除染をしていなかった」そうです。
環境団体が調査をしなかったら、有耶無耶になっていたのでしょうか。立つ鳥跡を…。

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********** 読者の声 **********

1)小生、仲間と共に40年来にわたり、万一の原発等の過酷事故に備えた、少しでも実効性のある、「原子力防災」の在り方について、指摘・提言等をしてきました。そうした経過の中で明らかになったことは、自治体(職員)は放射能に関して全くと言って無知・無関心であることです。司法も同じレベルで、信用するのは国と事業者のデータのみ。そして起こった福島第一原発事故。事故時に自治体が右往左往したのも当然の結果です。運転停止中でも核崩壊熱のリスクなど認識していません。あれから9年。のど元過ぎたら再稼働です。全ての自治体で、原子力地域防災計画の策定・見直しを早急に行うべきなのです。 N氏