【No.98】予防から治療まで
2003.05.30

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予防から治療まで
JIメールニュースNo.98  2003.5.30
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■■ 目次 ■■
1.《日本の明日》予防から治療まで
~健康を目指して奮闘する現場~

2.《お知らせ》
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1.《日本の明日》予防から治療まで
~健康を目指して奮闘する現場~
構想日本 政策スタッフ 金野 桂子

昨年10月より3歳未満の乳幼児は、加入している医療保険制度に関係
なくかかった費用は外来・入院ともかかった費用の2割負担、75歳以上
の高齢者は、外来・入院ともかかった費用の1割負担などが実施されまし
た。また、今年の4月からは、国民健康保険の自己負担は2割から3割に
なるなど、医療制度は大きく動いています。ただそれは、国民が本当に望
んでいる方向に進んでいるのでしょうか。どうも医療費の抑制ばかりが強
調されているような気がしてなりません。
私は、構想日本の中で医療を担当しており、予防や医療の現場で仕事を
している人たちから様々なお話を聞く機会があります。そこで少し視点を
変えて、現場で取り組む方々のお話を紹介することによって医療問題を考
えてみたいと思います。
●予防の現場から
「医療費の増加と、医療保険財政の赤字の拡大などが問題となっています
が、そのたびに医療費を減らす方法として、負担を増やす、医療の無駄を
排除するまたは、平均在院日数の短縮とかいったことが言われていますね。
でもこういったことだけが医療費削減の方策なのではないのにね。」と保
健師さんや保健に携わる方々からからよく聞きます。
自治体の保健師さんは主に、住民の健康を維持するための予防活動を基
本に生活を支援しています。様々な健康相談窓口を設けたり、その人なり
に地域で生活していけるように訪問指導なども行っています。ある保健師
は、「寝たきりになりたくない」、「足がもつれる・転びやすい、足が弱
くなった」等、地域の人々の声に耳を傾けました。特に高齢者は、家の中
や道路の小さな段差につまづきやすく、転倒・骨折・寝たきり・介護して
もらうということにつながるケースが多いのです。そこで、高齢者に対し
て寝たきり予防のための運動や食生活の改善などの取組みを始めました。
その結果、寝たきりになる人が減少するという成果が生まれました。
保健師さんたちは、「寝たきりの人を減らすことは介護費用を減らすこ
とにつながります。」さらに「私たちの現場で大切なことは顔の見える関
係なんです。安心して気軽に相談したり、雑談したりすることが、健康を
維持することにつながっていて大切なことなんです。ただ、こういったこ
とはすぐに効果が分るわけではないので重要だと思われないですね。」と
話しています。

●医療の現場から
諏訪中央病院の鎌田医師は、ある講演の中で、「良い医師とは、出会う
と患者の心が元気になって、患者自身の治ろうとする力を活性化してくる
人です。また、いつも患者が気軽に健康相談できて、もし難しい病気にな
ってしまった時には、専門の医者を探して紹介してくれること。これが現
代の良い医師だと受けとめています。」さらに「助かった時も、助からな
かった時も、患者や家族と『共感』してくれる心の働きが、現在の医療現
場で大切なことになってきています。」と話しています。
諏訪中央病院は、長野県茅野市にあります。茅野市は日本でも最も長
寿で、老人医療費が大変安いことで有名です。これにはこの病院も大きな
貢献をしてきました。茅野市は、脳卒中の死亡率が高い地域だったのです
が、この病院の医師たちが地域へ出ていって、食事の塩分を減らす「減塩
運動」を始めたり、あるいは老人が生活している部屋の温度を上げる
「一室暖房運動」など、自分達の生活習慣や、地域の暮らしを見直す活動
を進めました。その結果、脳卒中の死亡率を下げるという成果をもたらし
たのです。
鎌田医師は、「医療の仕事は、病気を治すだけではありません。病気に
させない、健康な地域をつくることも、医療の大きな役割なのです。だか
ら良い医師は、外来を訪ねた患者にすぐ注射したり、薬の処方せんを書く
のではなく、まず、患者の生活をよく聞いて、どのように生活を改善した
ら、投薬量を減らしても病気を治してゆけるか、こうした知恵を授けてく
れます。つまり常に生活という視点で患者を診てくれる医師が良い医師で、
そういう意思をもった医療というのは、大変質の高い医療だと言えま
す。」と話しています。
私が話を伺った保健師さんも、鎌田医師も共通しているのは、人間同志
の接触を大事にして取り組んでいることです。肉体的、精神的に助けを求
めている人がいれば、話を聞き、大丈夫と言って安心させることだけで、
どれほど元気になるかを知ったように思います。今回ご紹介した方の他に
も、このことを現場で実践している医療関係者は多いのです。しかし、残
念ながら大多数の医療関係者の関心は、検査や新しい技術、薬の投与など
別の方向に向いています。むしろ、これらのことは少しずつ忘れられよう
としているような気がしてなりません。
医療制度に手を加えるだけで、住民は健康的な生活を送れるわけではあ
りません。実際には、生きている人間が主役のはずです。あたり前のこと
ですがもう一度、制度だけでなく、人間中心の視点もよく考えないといけ
ないのではないかと思っています。

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2.《お知らせ》
~構想日本・加藤代表からのメッセージ~
『私たちは何を変えたいのか どんな世の中にしたいのか』
勉強会・交流会開催のお知らせ
構想日本代表の加藤秀樹が政策交流グループ「新世代の会」(学生や官
僚、経営者で構成)と「日本の構造改革後の将来像」について討論します。
「構造改革を唱える人達も、もっぱら経済の活性化の脈絡の中でしか語っ
ていない。手法としての改革ではなく、どんな世の中にしたいかをよく考
えることが肝心。各参加者があらかじめ考えてきてほしい」(加藤秀樹)
様々な政策提言によって注目を集める構想日本は、常に「イニシアチ
ブ」をつなぐ活動をしてきました。経済問題から外交、教育、医療まで、
様々な分野で変革を求められている現代。これからの社会を形作ろうとす
る時、本当に必要なのは「どんな世の中にしたいのか」という大きなビジ
ョンと、変革への具体的なアクションなのではないでしょうか。
こうした問題を加藤秀樹と共にじっくりと考える機会へ、みなさんのご
参加をお待ちしております。
◇主 催: 新世代の会( http://shinsedai.hp.infoseek.co.jp/ )
◇日 時: 6月3日(火曜日)
第1部 (講演及び質疑) 19:00~20:30
第2部 (異業種交流会) 20:30~21:30
◇場 所: 紙パルプ会館フェニックスホール 3階会議室
中央区銀座三丁目9番11号 03-3543-8111
http://www.kamipa-kaikan.co.jp
営団地下鉄「銀座駅」「東銀座駅」徒歩2分
都営地下鉄「東銀座駅」徒歩1分
◇参加費:
第1部:学生1000円、学生以外2000円(会場費、資
料費など)
第2部:学生2000円、学生以外3500円(交流費)
◇出 欠: 以下のフォーマットに沿って、明治大学商学部2年、益満寛
志 pimo22@zd6.so-net.ne.jp までお送りください。
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「6月3日の勉強会」出席します
①氏名
②会社または所属・学校
③メールアドレスまたは連絡先
④出席 1部・2部

◇講 師: 構想日本代表 加藤秀樹
略   歴
1950年   香川県生まれ
1973年   京都大学経済学部卒業後、大蔵省入省。証券局、主税局、
国税庁、国際金融局、財政金融研究所などに在籍。
1996年9月  退官
1997年4月  日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言する
ため、非営利独立のシンクタンク「構想日本」を設立。
・裁量行政に歯止めをかける省庁設置法改正
・自治体へのバランスシート導入
・公益法人制度の見直し
・自治体主導の地方分権の推進
・新エネルギー政策の提言
など、縦横無尽の射程から日本の変革を目指す。
また、同年4月より慶応大学総合政策学部教授を兼務。各地
でイニシアチブをとる人たちをネットワークで結び、政策
として結実させるJ.I.Wayを唱導する。
*構想日本ホームページ https://www.kosonippon.org/wp-manager/
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