【No.125】「“共産主義国家”日本・変革の処方箋 」に寄せて
2003.12.05

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
「“共産主義国家”日本・変革の処方箋 」に寄せて
JIメールニュースNo.125  2003.12.5
窓口はこちら! info@kosonippon.org
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
■■ 目次 ■■
1.《読者の声》「“共産主義国家”日本・変革の処方箋 」に寄せて
2.《J.I. Action Summary》
3.《第78回「J.I. フォーラム」のご案内》

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
1.《読者の声》「“共産主義国家”日本・変革の処方箋 」に寄せて

読者のみなさん、JIメールニュースに対し毎週さまざまなご意見をお寄
せ頂き、ありがとうございます。
今回は、JIメールニュースNo.108で掲載した「“共産主義国家”日本・
変革の処方箋 」、これについてのご意見《読者の声》(No.116)に寄せら
れたご意見をお送りします。
(No.108は http://kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html?no=116
No.116は http://kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html?no=124 )
*      *      *      *
シンクネット会員
田中 久雄様より( hisao@t3.rim.or.jp )

丹治氏の提言、それに関連した隈部氏の意見を興味深く拝見しましたが、
少し違和感を覚えた部分もありました。一つのテーマで議論するのも有益
だと思い、私見を述べてさせて頂きます。
おおむね80年代まで、日本の経済発展は目覚しく、世界有数の経済大
国となり、日本の経営モデルは、成功の秘訣として、世界でもてはやされ
ました。しかし、バブル経済の崩壊を境に、日本モデルは時代遅れとみな
され、氏の友人から「共産主義国家」とまで揶揄されるまでに至ったわけ
ですが、その評価の急激な変化と落差には驚くばかりです。とはいえ、戦
後の壊滅的な社会経済状況から、普通の人々が今のような豊かな暮らしを
享受できるようになったのは、たとえ人から「共産主義国家」とからかわ
れようが、良くも悪くも、日本は日本的なやり方で、今日を築き上げてき
たのはまぎれもない事実です。
確かに、過去の成功は現在、将来を保障するものではなく、今の日本が
世界の変化に遅れをとり、いろいろ改めていかなければならない問題を多
く抱えていることは、言を待たないと思います。とはいっても、過去のや
り方をすべて否定するのも、また誤りであると考えます。日本のいいとこ
ろは伸ばし、悪いところは改める、きわめて当たり前の作業が必要になる
のでしょう。問題は何が良くて、何が悪いのかの見極めです
氏は「資本主義国家」「民主主義国家」のルールと、それにより何をす
べきかをきちんと教え込む必要性を指摘されています。もっともなことな
のですが、「資本主義国家」といっても、アメリカ型とヨーロッパの大陸
型に違いがありますし、「民主主義国家」といっても、君主制も大統領制
もありますから、様々な受け取り方、バリエーションがあっても不思議は
ありません。「資本主義」でも「民主主義」でも、学者の研究室や実験室
ではなく、凄惨な争いの歴史の中から生み出されたものです。一つのパ
ターンが正解で、それに合せなければならないと思い込む必要はありませ
ん。
大事なことは、私も丹治氏がいうように、世界に通ずる「わが国として
の価値」の提供、ひいてはこれからの我が国にふさわしい「資本主義」や
「民主主義」の構築だと思います。そのためには、「その価値」とは何な
のか、内容が明確にならないままに、お題目のように唱えているだけでは、
何の実効性もありません。その状態では、これまでの日本モデルの何が悪
いのか、何が良いのか、見極めは簡単ではないと思います。私たちは丹治
氏のいう世界に通ずる「我が国としての価値」について、もっと議論する
必要があるのではないでしょうか
隈部氏は、日本の変革の処方箋として、「税制改革」と「教育改革」を
挙げておられます。氏は、日本は高率で累進性の高い世界一の「共産主義
的税制」と断定されますが、所得税率は最高37%、実効税率で2000万円の
給与所得の場合14.2%と、いずれも英米独仏より低く、資産税の中の相続
税の5カ国比較では、課税価格により異なりますが、ほぼ英米より低く、
独仏より高いのが現状です。2000年時点のOECD加盟29ヶ国の国税・地
方税の国際比較の資料によると、29ヶ国の中で日本の租税負担率は17.2
%(2000年)で、下からメキシコについで2番目である。ちなみに一番高い
デンマークが45.5%、イギリス31.2%、フランス29%、ドイツ23.1%、ア
メリカでさえ22.4%です。これでも世界一の「共産主義的税制」といわれ
るのでしょうか。
氏は「努力した人が報われない」税制といわれますが、資産があり努力
しないでも所得の高い人もいれば、一生懸命働いても所得で報われない人
はいくらでもいます。また、減税による個人投資家の育成の重要性を指摘
されますが、日本人の高い貯蓄意識にもかかわらず、上場市場の個人の持
ち株比率は昭和24年の69.1%を最高に、最近までほぼ一貫して減り続けま
した。一世帯の金融資産の中で、株式は今は8.5%に過ぎません。このこと
は資産はあるが株を買わないことを示していると思うのですが、金融機関
が個人投資家をないがしろにしてきた姿勢が原因とも考えられます。氏の
言われる「投資家」「個人株主」の育成が、「主権者」「納税者」意識を
生むという理屈は、素直にうなずけません。
また氏は「教育改革」として、「権利」は教えるが、「義務」は教えな
いことが、「市場経済」「自己責任」の時代に合わず、少年犯罪の原因と
もなっていると指摘しています。しかし、「義務」で行動する人には、限
界があります。「学ぶこと」「働くこと」「互いに助け合うこと」に喜び
を感じ、行動に移せる人を育てることが今必要な「教育」だと、私は考え
ます。
*      *      *      *
※JIメールニュースNo.124「大停電を体験して」(11.28発行)について
これは当初、日本でも電力不足が心配された大停電直後の時期に掲載す
る予定でしたが、事務局の段取りが悪く何カ月遅れにもなってしまい、申
し訳ありませんでした。
それにもかかわらず、多くの方から実体験に基づいたコメントを頂き、
都市の安全性、危機管理への関心の高さがうかがいしれました。
今後、構想日本が活動していく上で参考にしていきたいと思います。
また、最近読者のみなさんからJIメールニュースに対し多くの反響を
頂いていますが、週刊発行では読者の声としてすべて掲載しきれない状況
になっていますので、現在、対応のし方を検討中です。
≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
2.《J.I. Action Summary》
■構想日本の11月の主な活動状況■
(1)国と地方
●10自治体で実施した「事業仕分け」作業結果をベースに、「三位
一体」改革の真の目的について講演
(国会図書館調査及び立法考査局、日経センター)
●全国知事会との協働の推進
・自治体の仕事に対する国の関与を解消する法案の作成など
(2)公益法人制度
●「非営利活動法人制度」の抜本的改革に向けた情報発信
(第9回info-netニュース
http://kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=201 、
第10回 http://kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=202 )
●内閣官房行政改革推進事務局の「有識者会議」に出席(来年秋に、
制度改革の枠組みをとりまとめる予定)
(3)特殊法人(道路公団)
●「道路公団の民営化の方向性」に関する説明(11/21、日経CN
BC出演)

(4)医療制度
●「医療の質」を高めるための制度改革案を作成中(医療事故発生の
メカニズム解明を切り口に)
(5)公教育制度
●全国文化フォーラム@岐阜県多治見市の教育分科会に出席、現在作
成中の提言案をベースに議論
(6)年金制度
●抜本的な公的年金制度に関する議論喚起に向けたキャンペーン
・JIフォーラム「年金制度は不安でいっぱい!?」(議事録は
近々、ホームページ上にアップ)
(7)エネルギー戦略
●核燃料サイクル政策の見直しに関する提言
・『論座』11月号に、「核燃料再処理見直しは施設汚染前の今し
かない」を掲載
上記のほか、「中小企業政策」、「政治改革」などの政策プロジェクトが
進行中。
詳しくは、 http://kosonippon.org/wp-manager まで。

(文責:政策担当ディレクター 冨永朋義)
≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
3.《第78回「J.I. フォーラム」のご案内》
マニフェストを活かすには
– 政治家の「活動」と「カネ」をチェックする仕組みを考える-
——————————————————————-
今回の総選挙では、マニフェストをきっかけに、政策で政党や政治家を
選ぶ方向に一歩踏み出しました。しかし、何よりも重要なことは、マニフ
ェストが実行されるかどうかです。それには、私たち有権者が政治家の活
動をチェックすることが不可欠です。
しかし現在は、そのチェックに必要な情報(政治家の活動状況やカネの
使いみち)が、私たちの手に行き渡る仕組みにはなっていません。政治家
の情報公開は、大変遅れています。今のままでは、マニフェストは単なる
ブームで終わってしまいます。
公職選挙法や政治資金規正法など現行制度の問題点を整理した上で、
国会議員の方々に、政治家の情報公開を進める仕組みについて議論してい
ただきます。
——————————————————————
日 時  :平成15年12月17日(水)
会 場   :銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  :午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者  :衆/参国会議員複数
加藤 秀樹(構想日本 代表)
コーディネーター :丹治 幹雄(構想日本 政策委員)
主 催   :構想日本
定 員  :160名
参加費  :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
—————————————————————–
参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
—————————————————————–
参加ご希望の方は、誠に恐縮ですが12月16日までに出欠の是非を
お知らせ願います。
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◆メールをお待ちしています!
1)お名前:(掲載する場合はイニシャル表記にします)
※匿名、ハンドルネーム使用、不掲載をご希望の場合は明記下さい。
2)肩書き:(掲載可能なもの)
3)メールアドレス:(非公開)
4)メッセージ:(適度に改行を入れて下さい)
◆構想日本メールニュースのご購読は下記のアドレスから。
http://kosonippon.org/wp-manager/mailnews/
◆配信の停止やアドレス変更は、 news@kosonippon.org にご連絡願いま
す。
◆構想日本メールニュースは、政策シンクタンク「構想日本」の最新
情報をお届けする無料のメール配信サービスです。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
週刊JIメールニュース  発行:構想日本 発行責任者:加藤秀樹
info@kosonippon.org
http://kosonippon.org/wp-manager/
Copyright(C) 1999-2002 -構想日本- All rights reserved.
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛