- 【No.291】賑わいの神楽坂で、美しい喫茶店が・・・。
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JIメールニュースNo.291 2007.3.2発行
賑わいの神楽坂で、美しい喫茶店が・・・。
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◆◆ 目 次 ◆◆
1.【賑わいの神楽坂で、美しい喫茶店が・・・。】
*構想日本ホームページで「ワンクリックアンケート」開催中。
「Q:教育行政の権限強化に賛成? 反対?」にお答えください。
〔アンケート期間:2007/03/01(木) ~2007/03/07(水)〕
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1.【賑わいの神楽坂で、美しい喫茶店が・・・。】
地域活性化プランナー
川部 重臣
東京・神楽坂は古い石畳の路地が入り組んだ迷路のような街だ。神楽坂の魅
力は、独特な街並みと散在する個性的な店の集積にある。古い町工場の空き
家に植物園のような高感度の花屋があったり、ふつうの町家をそのまま利用し
た南欧料理や韓国料理の店、路地の奥には気位の高い料亭や鮨・天麩羅の
名店がひっそり客を迎えたり、豪華な欧風内装の大阪寿司の老舗や、洗練さ
れたチーズ専門店にドイツ風のパン屋があるかと思うと、隣接して昔ながらの
惣菜店があったり・・・古今東西の商業形態のエッセンスを路地の隅々に散り
ばめていて、神楽坂の散策は迷宮の宝探しのように興味が尽きない。
住まいが近いこともあってこの20年ほど神楽坂で沢山の時間を過ごしてきた。
その間、仲良しのバーのママやマスターに日本料理店の主人、さらには神楽
坂で豊かな時間を共有してきた大切な友人と永別することもあって、いまでも
路地を歩くたびに切ない想いに駆られてならない。
こんな神楽坂でまたひとつ淋しい話が飛び込んできた。神楽坂の中ほどに位
置する人気の喫茶店が「パウワウ」。35年も盛業を続けてきた同店は神楽坂
商店街の顔であり、多彩な人材が集うサロンとしてまちの賑わいを支えてきた
といっても過言ではない。
店舗外観は山小屋風で、ドアを開くと、ほの暗い雰囲気のある空間が迎えてく
れる。僕のお気に入りは、突き当たりの狭い急な階段を上がった2階だ。明るく
広い空間は現代美術のギャラリーでもあり、人の心を魅了する先進的な彫刻や
絵画や洗練された陶作品が、ゆったりと飾られている。吟味した蔵書棚の前に
は、飛び切り座り心地のよい藤色の革張りの椅子があって、ここは神楽坂の旅
館で執筆する映画監督お気に入りの場所だ。
昨年暮れ突然に、この店が閉店するという挨拶状が舞い込んできて驚いた。な
んでも付近の再開発計画によるもので、3年ぐらいは掛かるらしい。新しいビル
での再開には莫大な費用が必要ということで、店主夫妻は自分たちの年齢を考
えると、「断念せざるを得ない」という。長い間、懸命に立派な経営を続けてきて、
多くのお客様から強い支持をかち得てきた見事な店が、「地域の再開発」という
理由で、閉店を余儀なくされるという。
衰退してしまった商店街や中心市街地の再開発という取組は、「パウワウのよ
うな繁盛店をいかに創り出すか」ということが本来の目的である筈なのに、そん
な繁盛店を閉店に追い込むという再開発は本末転倒ではないか。街の活性化
が全国で大きな話題になっているだけに、この皮肉な顛末にはあきれて言葉も
ない。
中心市街地活性化とまちづくりに関しては、大型店の規制や土地用途など都市
計画的な議論ばかりで、もっとも肝心な個店の魅力づくりが論じられていないの
ではないか。どれだけ商店街の舗装やアーケードが立派になり、居住機能を市
街地に回復しようとも、個店の魅力がなければ来店客は増えず、市街地の活性
化もない。
賑わいで評判の神楽坂商店街で、もっとも成功している珠玉のような名店の閉
店は、そんな大切なことを教えてくれる、残念で淋しい出来事だ。
*川部重臣(かわべ しげおみ)氏のプロフィール
1943年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学第一商学部卒業後、株式会社アド
エンジニアーズ・オブ・トーキョー入社。コピーライター・マーケテイングプランナ
ー・CIコンサルタントを経て独立。大企業・中小企業・自治体の仕事を経験。問
題解決プランナーと自称。墨田区の中小企業革新のCIや北区の産業活性化ビ
ジョン策定に関与。中小企業大学校でCI講座を10年近く担当、受講した自治
体担当者を通して地域の産業振興に幅広く関わって来た。現在は、静岡県広
報アドバイザーとして、分権時代の新しい行政コミュニケーション<戦略広報>
に挑戦中。平成16年から中小企業庁のJAPANブランド育成支援事業の推進委
員をつとめ、地域を活性化する地域の産業振興と地域ブランドづくりに関与。中
心市街地活性化計画では、福知山市で人の活性化をテーマにCI手法の導入
を提案した。(財)日本広告制作協会(OAC)アドバイザーとしては、コミュニケ
ーションとクリエイティブの有用性の社会的認知獲得を支援している。そのほか、
中小企業基盤整備機構の地域ブランドアドバイザー、全国商工会連合会エキス
パート、しずおか産業創造機構の経営支援アドバイザーも務める。
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