【No.385】職人リレーエッセー(13)錺物師の家に生まれて
2009.01.30

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JIメールニュースNo.385  2009.1.30発行
職人リレーエッセー(13)錺物師の家に生まれて
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◆◇ 目 次 ◇◆
1.【職人リレーエッセー(13)錺物師の家に生まれて】
2.【自治体の「事業仕分け」実施のご案内 -第37弾、第38弾-】
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1.【職人リレーエッセー(13)錺物師の家に生まれて
株式会社 竹影堂
代表取締役 中村 佳永
やかん、フライパン、スプーン、電車、自動車…、私たちのまわりには金
属で作られたものが溢れています。しかしみなさん、金属の物を手で作るこ
と、想像できますか?
注文に応じて金属を使って色々な物を「手」で作る、そんな家に私は生まれ
ました。昨年引退した0系新幹線の代名詞でもある先端部分が板金職人の手
作業により生まれた、という話は有名です。我が国の製造技術は世界の中で
も群を抜いていますが、その根底にあるのが「手仕事」です。日本人の緻密
な手仕事があったからこそ、日本の工業製品が世界に認められるに至った経
緯は周知の事実だと思います。
伝統工芸は京都の地場産業の一つです。しかし、手仕事を日本の産業の一
つとして位置づけたい―これが私の目指すところであり、「便利」になった
今日への挑戦状でもあります。そのためには「便利でないこと」に対しての
付加価値を訴え広める活動が不可欠です。
・錺物師とは…
「金+芳」の字が意味するように、金属を用いて芳しく飾るという仕事で
す。主に茶道具、香道具、仏具等の制作や博物館の復元を行っています。
金属工芸の加工法は大きく鋳金(溶解した金属を型に流し込む)、鍛金・
鎚起(金属を金鎚や木槌でのばしたり、打ち起こして成型する)、彫金
(鏨を用いて彫刻を施したり、他金属を嵌め込む 等)に分類されます。錺
物師はこれらの加工法を取りまとめ一つの製品(作品)を作る総合的な役割
を担っています。今の工業製品に置き換えるならば、商品企画と生産ライン
の二つの役割を持っていると言えるでしょう。
・金属とあそぶ
冷たい―これは多くの方が持つ金属へのイメージでしょう。しかし、実際
は違います。頑固なところもありますが、結構素直でかわいいやつなんです。
ここは違うというところを叩いたら、思った形になってくれませんが、相手
の気持ち(素材の特性)を理解してあげれば、思いのままに染まってくれる。
意外と柔和な性格をしているんです。
銀を用いて作ることが多いですが、加工のし易さから最も手作業に適してい
る材料だと思います。また、素材の価値と作る価値とのバランスがとれてい
る材料です。金は作る価値が素材に負けてしまう。金工では化学反応による
着色をするのですが、様々な色に染まってくれるというところも魅力の一つ
です。作り手の思いで化粧して「かわいいやつ」にする。これが金属とあそ
ぶ楽しみです。
・「作る」と「伝える」
職人の修業を続ける中で、自分の思いを伝えたいと考えるようになり、そ
の表現の方法として慣れ親しんだ「金属」を選びました。作家 竹影堂佳永
として物を作る際、人との出会いなど様々一瞬を作品に閉じ込めています。
その作品を手にとり語らう喜びは格別たるものです。完成までに要した時間
もその一瞬への思い入れでもあります。
・手作業の付加価値と文化
工芸品と工業製品を比較して論じる際、利便性・経済性が挙がります。
工業製品にも多くの作り手の思いが封じ込められているだろうがそれは見え
にくい。これが手作業の品との大きな違いです。生産に費やす時間の長さも
大きな違いです。
これが価格にも反映されてくるわけですが、逆に捉えれば「作り手の顔が見
える」、「(作る)時間の経過が見える」ことが手作業の付加価値であると
言えます。
「便利でない」環境での物作りだからこそ生まれる価値だと信じています。
作り手の顔が見えてくることにより、使い手の品物に対する価値感は変わっ
てくる。品物が語ってくれる。これが手作業の価値ではないでしょうか。
日本は模倣文化と言われますが、模写文化だと思っています。「写し」が
作品となる。これが日本の物作り文化です。「写し」をした人の思い・技術
が加わって、新たなオリジナルとなる。そうして発展してきたのだと信じて
います。つまり、「写し」であっても私の作るものは私でしかない。それは
京都で生まれ育ったという背景がある私が作るからであって、知らずと京都
の感性が盛り込まれているからに他なりません。CAD・CAMのようにコンピュ
ーター化された現在の工業製品は「写し」は「模倣」になり得ます。「写し」
が作品になる―「便利でない」からこその良さであり物作り文化はないでしょ
うか。
・産業とするために…
どんな産業も需要と供給の上に成り立っています。伝統工芸を産業として
広めるための第一歩として始めたアンテナショップが今年開店5周年を迎
えます。「銀の普段使いもの」として様々なメディアにも取り上げていただ
き、軌道にのってきましたが、まだまだ生活の中の金属の知名度は低いと考
えています。知名度が低いということは未知数であるということです。
手仕事を産業に位置付ける―これは、夢であり目標です。私一代で実現で
きるかわかりませんが、地道に金属の良さを伝える活動を続け、後進に伝え
て行くのが企業主でもある私の役割です。知ってもらって初めて需要の幅が
広がります。
今後は、これまで京都・東京に特化していた作家 竹影堂佳永の作品発表の
場を全国に展開し、地味ではありますがアンテナショップと二軸で金属の手
仕事を広める取り組みを継続していきます。
*中村 佳永氏 プロフィール
1958年、6代3世 竹影堂 榮真の三男として京都にて出生。定時制高校入学と
同時に実家の工房に入り、父の師事を受ける。1990年2月、株式会社 竹影堂
設立。同時に父より竹影堂 佳永の称号を得る。
1998年、東京国立博物館保管の法隆寺献納宝物中の灌頂幡の模造品を3か年か
けて兄と制作。
2007年、京都伝統工芸大学校総合工芸コース金属工芸科講師に就任。
その他、個展並びに歴代の志と伝統を重んじ、新しい京錺(金工)の伝統を
時代に継承すべく、後継者の指導に努め、学生の指導にあたり、個展及び多
くの展示会に出品または主催し、今日に至る。
竹影堂URL:  http://www3.ocn.ne.jp/~chikuedo/
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2.【自治体の「事業仕分け」実施のご案内 -第37弾、第38弾-】
■■第37弾 自治体の「事業仕分け」■■
~2009年のトップバッター 京都府、初の「議会主導」開催!~
構想日本が2002年より行ってきた行政の「事業仕分け」。歳出削減の
効果や、職員、住民の意識改革などの実績が浸透し、昨年は12自治体
(14回)と4省で行い、事業仕分けが飛躍した年となりました。
第37弾の京都府は、初の議会主導での実施です。会派「民主党京都府
議会議員団」が事業仕分けのツールを使い、その結果を今後の議会活動
の材料にします。府庁も全面協力で、当日の説明者としての参加など、
従来の事業仕分けと同様に行います。議会主導の事業仕分けは全国初
ですが、一つのあり方として今後のモデルになるでしょう。
百聞は一見に如かず、まずは侃々諤々の議論を傍聴し、その威力を
確かめて下さい。
【日時】 2009年2月6日(金) 9:30~17:30
※入退室自由です。ご都合の良い時間帯にお越しください。
【会場】 「きょうと平安会館」 朱雀の間、白河の間
(京都市上京区烏丸通上長者町上ル)
※会場に関するお問い合わせは、構想日本まで。
【対象】 京都府の事務事業(20事業/2班体制)
【参加者】 事業説明者:京都府職員
「仕分け人」(評価者)、コーディネーター:構想日本事業仕分け
チーム
■■第38弾 自治体の「事業仕分け」■■
~京都府に続き、近畿地方で連続開催 第38弾は大阪市!~
構想日本が2002年より行ってきた行政の「事業仕分け」。歳出削減の
効果や、職員、住民の意識改革などの実績が浸透し、昨年は自治体で
14回(12自治体)、国では4省が実施し、全国の自治体をはじめ、報道
関係者や一般市民など各方面からますます多くの反響をいただき、今や
行財政の切り札として定着しつつあります。
約270万の人口を抱える大阪市。政令指定都市での実施は、横浜市、
浜松市に続き3都市目です。平松邦夫市長が「市政改革基本方針に
基づく今後の取組方針」に事業仕分けの実施を掲げ、強いリーダー
シップによって実行に移したことにより実現します。今回の特徴は、
民間活用と市民参画の視点を重視している点です。
百聞は一見に如かず、まずは侃々諤々の議論を傍聴し、その威力を
確かめて下さい。
【日時】 2009年2月8日(日) 9:30~17:00
※入退室自由です。ご都合の良い時間帯にお越しください。
【会場】 大阪市職員人材開発センター
7階講堂(受付・第1会場)及び5階大教室(第2会場)
(大阪市阿倍野区阿倍野筋3-13-23 あべのフォルサ内 )
※会場に関するお問い合わせは、
行政評価担当(06-6208-9757)まで
【対象】 大阪市の事務事業(20事業/2班体制)
【参加者】 事業説明者:大阪市職員
「仕分け人」(評価者)、コーディネーター:
構想日本事業仕分けチーム、大阪市民等
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≪国の事業仕分け:4省事業の約14%が「国から手離すべき」≫
構想日本が自民党無駄撲滅プロジェクトチーム(座長:園田博之衆議院
議員)に協力して行っている「政策棚卸し」=事業仕分け。昨年8月から
12月にかけて、文科省、環境省、財務省、外務省について実施しました。
その結果、4省で約3500億(事業費合計の約14%)が「国から手離すべき」と
判定されました。行政各機関で“財源不足”が騒がれている今こそ、ゼロ
ベースで行政の担うべき事業を再考し、無駄や重複を排除していくことが
必要です。
今年は他省庁についても事業仕分けを実施するよう、構想日本では引き
続き働きかけていきます。皆さんからも声を上げていただき、世論喚起を
お願いいたします。
評価結果など詳細につきましては、構想日本HPをご覧ください。
≪事業仕分けとは・・・≫
・国や自治体の行政サービスについて、予算書の項目ごとにまず要否の
議論をする。
・その上で、実施主体(官か民か、国か地方か)を議論
・「外部の目」を入れる
・「公開の場」で議論する
※構想日本のホームページ「事業仕分け」もご覧ください。
http://kosonippon.org/wp-manager/project/list.php?m_category_cd=16
●これまでの実例をもとにポイントをまとめた、構想日本編『入門 行政の
事業仕分け』(ぎょうせい刊・1,800円)のご注文も下記にて承ります。
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ご参観ご希望の方は、出欠の是非を、下記のメールアドレスに
お申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先
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*お問い合せは、 西田/伊藤/塩野まで。TEL 03-5275-5607
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