【No.56】寝たきり防止のための健康づくり
2002.07.19

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寝たきり防止のための健康づくり
JIニュースNo.56  2002.7.19
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■■ 目次 ■■
《コラム》寝たきり防止のための健康づくり
― 川崎市から、地域の取組みの報告 ―
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《コラム》寝たきり防止のための健康づくり
― 川崎市から、地域の取組みの報告 ―
「政策」を考える場合、何か問題が起こっている「現場」がとても重
要です。「現場」で、その問題を解決するためにどのような取組みがさ
れているのか、「現場」での工夫やイニシアチブが、問題解決の鍵を握
っていることが少なくありません。

構想日本「健康政策」プロジェクトでは、地域で取り組んでいる健康
づくり活動の事例を紹介するホームページを開設しています。
( http://kosonippon.org/wp-manager/prj/hlt/ )
そのひとつが、寝たきりの防止を目的とした神奈川県川崎市布田・中
野島地区での取組みです。同地区の保健師が、住民の「寝たきりになり
たくない」というニーズに応えるため、「寝たきりの発生予防」を保健
活動の目標に掲げた取組みを平成5年度から始めたというものです。
<JIニュースNo.31(2002.1.24発行)をご参照ください。
http://kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html?no=38 >

その中心的存在である、川崎市布田・中野島地区保健師の武田順子さ
んの活動について、ご紹介します。
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介護予防~「転倒予防」をテーマに地区組織活動とその広がり
~川崎市布田・中野島地区での取組み~
保健師 武田順子
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平成5年から、寝たきりの主な原因疾患である脳卒中の予防をターゲ
ットとして、健康づくり活動の支援を進めてきた。この活動では、「最
小の経費で最大の効果」をあげるため、経営学の手法を取り入れた「目
標共有型健康づくりモデル」を用い、行政と住民が目標と評価の視点を
共有、個人レベルの評価指数の達成と達成感の共有を重視している。
今回は、活動内容のレベルアップと「転倒予防」をテーマとした健康
づくり活動の広がりを報告する。

●「転倒予防」をテーマとした健康づくり活動の支援

きっかけは、足がもつれる・転びやすい等、足が弱くなった等の住民
の声であった。川崎市での寝たきりの発生原因をみると、多摩区は、脳
梗塞・脳出血が半数を超えて最も多く、骨折も1割近くあったことから
(平成7年「川崎市寝たきり訪問指導調査」、川崎市衛生局)、「転倒
予防」をテーマとした健康づくり活動の支援を展開した。

●「転倒予防ボランティア養成教室」の開催
寝たきりの原因疾患の一つである転倒による骨折を予防する為に、保
健師は、多摩すこやか活動推進委員会に、「転倒予防;地域診断Plan
Do See」を提案し、委員会で検討した結果、13年度の多摩すこやか活
動の主な事業となった。中野島町内会婦人部の協力を得て、東京都老人
総合研究所・東京大学・保健所等の支援により、「転倒予防ボランティ
ア養成教室」を開催した。
受講者は、多摩すこやか活動推進委員会参加のグループの代表31人で、
階段を上ることが楽になった等の自覚的な効果に加え、脚の筋力アップ
が東京都老人総合研究所・東京大学から客観的データで示されたことで、
転倒予防効果が確認された。
拡大効果として、15の各健康づくりグループへ「転倒予防」が広めら
れ、普及・啓蒙が進んだ。

●卒業生による「転倒予防教室」
「転倒予防ボランティア養成教室」の卒業生8人が、布田・中野島地
区での転倒予防による健康づくり活動の拡大をめざして、保健師と共に
「転倒予防教室」を企画運営し、転倒予防(効果)の体験談の発表など
を行った。
転倒予防への関心の高さが、参加人数に表れた。91人(延べ278人)
が参加し、年齢は50~80歳であった。また、自宅でもできるよう、転倒
予防ボランティアが「転倒予防体操カセットテープ」を作成し、希望者
にはダビングによって提供した。

●グループ活動「元気アップ塾」
「転倒予防教室」の卒業生33人が継続を希望し、グループ活動として
転倒予防による健康づくりを継続することとなった。転倒予防ボランテ
ィア7人を含む計9人が、「元気アップ塾」の世話役を引受け、布田・
中野島地区で「転倒予防」の健康づくり活動の普及・拡大をめざし、現
在も月4回(1回は講師あり、他3回は自主運営)、活動中である。

●以上の取組みからわかること
今回の健康づくり活動は、健康づくりグループ→転倒予防ボランティ
ア養成教室→転倒予防教室→元気アップ塾と広がり、地域に根付いた活
動を展開しはじめている。
このような「地区組織活動とその広がり」の成功の“カギ”は、市民
ニーズを受けて「地域診断Plan Do See」を提案し、住民が選択をし、
共感した住民と共に活動をしたことにあると考える。
介護予防の健康づくりは、“元気アップ”効果と経済効果があり、少
子高齢化社会において、重要な政策であると考えられる。“元気アップ”
効果としては、高齢になっても元気でいきいき暮らせる人の数が増え、
経済効果としては、健康づくり活動の広がりしだいで、高齢者の医療費
・介護費用の軽減が期待される。

●まとめ
川崎市民の関心が高いのは、①生活習慣病の予防知識、②バランスの
よい食事のとり方、③健康体操や筋力トレーニングの手法、④健康診断
や健康相談の受け方、⑤痴呆にならないための予防知識、⑥気功や太極
拳などの運動方法、⑦閉じこもり・寝たきりの予防知識、の順になって
いることから、介護予防の健康づくり活動の充実・拡大が望まれる。
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「健康政策」プロジェクトでは、全国の健康活動の成功事例を随時、
紹介していきます。また、皆さんの知っている健康活動の成功事例を是
非、ご紹介下さい。
ご意見等もお待ちしています。ご連絡は、konno@kosonippon.org ま
でお願い致します。
(文責:「健康政策」プロジェクト担当 金野)
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