- 【No.788】「特ダネではないけれど(15) 財政の防災・減災」 |新聞記者 松浦祐子氏|
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J.I.メールニュース No.788 2016.12.22 発行
「特ダネではないけれど(15) 財政の防災・減災」
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これからクリスマス、そして正月ですね。早いもので今回が2016年最終号です。
新年は1月5日から配信致します。本年もご愛読頂き、ありがとうございました。
今年もインフルエンザが流行っているようです。皆様ご自愛頂き、良い年をお迎え下さい。
来年も皆様と一緒に考えて、歩いて参ります。どうぞ宜しくお願い致します。
【1】<巻頭寄稿文>
「特ダネではないけれど(15)財政の防災・減災」
新聞記者 松浦 祐子
【2】<お知らせ>
(1) 第232回J.I.フォーラム 2017年1月23日(月)開催
(2) 今後の構想日本の活動
【3】<アーカイブ(過去の寄稿文)>
「3.11」前の飯舘村の様子です。
JIメールニュースNo.334 2008.1.25発行
【首長リレーエッセー(19) 村民の心、再発見塾でした】
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【1】「特ダネではないけれど(15)財政の防災・減災」
新聞記者 松浦 祐子
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2016年もまた、日本が地震列島であることを痛感させられる年でした。4月には熊本、10月には鳥取中部、11月には福島沖を震源とする大きな地震がありました。防災、減災は、国、自治体、住民に共通して関心が高く、取り組む必要性がある課題の一つでしょう。
今日22日、国の2016年度第3次補正予算案(約2千億円)と2017年度一般会計予算案(約97兆円)が閣議決定されました。国の財政健全化の取り組みも、財政危機への防災、減災の取り組みだととらえてみてはどうでしょうか。備えあれば、憂いなしです。
3次補正予算案では、追加で赤字国債を発行することになりました。年度途中で、赤字国債の発行額を増やすのは、リーマン・ショック直後の2009年度以来です。これは想定していた金利による利払い費※の「備蓄」(利払い費の余剰分)を経済対策で使い果たし、今年度の税収の不足分をまかなえなくなり、赤字国債で穴埋めするものです。そのうえ、2017年度の予算案では、想定する金利を今年度の1.6%から一気に1.1%まで引き下げ、「備蓄」の量を約5千億円分減らすことにしました。
想定金利は通常、現状の市場での金利より高めに設定されています。それは、急な金利の上昇に備えるためです。例えば今年度(2016年度)の予算では、国だけで800兆円を超える国債(借金)に対して、1.6%の金利を想定して利払い費が組まれていました。しかし実際には国が発行した国債を、日本銀行が市場を介して大量に買ってくれている(異次元の金融緩和)ため金利は上がらず、利払い費は少なく済んでいます。そこで余った分は「備蓄」となり、これを使って、年度途中に経済対策や災害対応の補正予算が組まれることが続いていました。
しかし、今後もし国債金利が想定の1.1%(2017年度)を超えるようなことになれば、利払い費が想定以上に必要になり、予算が足りなくなってしまいます。利払い用の財源を作るために、予定していた事業を止めるか、税金や保険料を値上げするのかの判断を迫られることになります。新たに赤字国債を発行することも考えられますが、その時には、より高い金利を求められることが予想されます。
今、政府は、社会保障に必要なお金の増加額を毎年5千億円以内に抑えようと、医療や介護サービスのあり方を変えることに四苦八苦しています。そんな中、金利が1%上昇するだけで、毎年約1兆円ずつ利払い費が増えていくと試算されており、追加でそのお金を捻出しなければならなくなるのです。
世界各国の国債金利を見渡せば、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、韓国は2%台です。しかもアベノミクスは、年率2%の物価上昇を目標に掲げています。一般的には、物価が上がっていくにつれて金利も上がっていくのが、経済の循環とされています。物価は上がるけれども、金利は低いまま、という状態が永久に続くと考えるのは不自然です。デフレを脱却すれば、日本銀行が買う国債の量を減らしていく必要があり、その過程では金利が上昇することが考えられます。
また日本経済の状況にかかわらず、複雑にからみあった国際経済の中では、いつ、何が引き金となって金利が上昇するのかは分かりません。最近は、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が景気の回復を受けて、米国債の金利を上げることを決め、その影響で日本国債の金利が上昇を見せる場面もありました。
金利が上昇を始めた時に、新たに発行する国債の額が多ければ多いほど利払い費は膨らみます。時には国の予算が組めなくなるなど、被害は甚大になります。逆に新規国債の額を少なく、またはゼロにできていれば悪影響は減らせます。国の新たな借金を減らしていくことは、財政上の「減災」の取り組みと言えます。それが、財政健全化の具体的な目的の一つなのです。
改めて今回の国の予算案を見てみると、「備蓄」を減らした上に、新規国債の発行額も微減にとどまっており、「減災」の取り組みは不十分と言わざるを得ません。国土強靱化を掲げる安倍政権ですが、財政に関しては、より脆弱化したと言わざるを得ません。過剰におびえる必要はありませんが、天災は忘れたころにやって来るものです。2017年、そうならないように祈らずにはいられません。
※ 国債の利子を払うために必要な費用、振込み手数料や印紙など
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松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)
1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当などを経て、現在は新潟で県政を担当。
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【2】(1) 第232回J.I.フォーラム 1月23日(月) 開催
「ギャンブル」を考えてみよう
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「統合型リゾート(IR)推進法」が臨時国会で成立しました。
この法律はカジノを解禁し、併せて宿泊施設などを整備して地域経済の振興に役立てることが目的とされています。国会やメディアでは、経済効果やギャンブル依存症などが議論されましたが、必ずしも国民的議論ではありませんでした。
カジノがない国は珍しいという一方で、競馬、競輪、競艇からパチンコまで、庶民の日常にギャンブルがある国も珍しいでしょう。
この機会に、ギャンブルの功罪、付き合い方について考えたいと思います。
◯日 時:2017年 1月23日(月) 18:30~20:30 (開場18:00)
◯会 場:アルカディア市ヶ谷 4階 「鳳凰」 (千代田区九段北4-2-25)TEL 03-3261-9921
※場所にご注意ください
◯ゲスト:木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
玄 秀盛(公益社団法人日本駆け込み寺 代表理事)
他
◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)
◯主 催:構想日本
◯定 員:100名
◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。
◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)(先着順)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。
アルカディア市ヶ谷 2F レストラン
※フォーラムへのご参加は1月23日(月)12:00まで info@kosonippon.org にお願いします。
お申し込みはこちらから http://kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php
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2月の第233回J.I.フォーラムは 2月23日(木) 昼 14:00~開催予定
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(2)《今後の構想日本の活動》
2017年1月21日(土)福岡県 大刀洗町 「住民協議会」(全4回中の第4回)
1月22日(日)静岡県 浜松市 「防災住民協議会」(全5回中の第3回)
1月28日(土)29日(日)千葉県 富津市 「事業仕分け」(テーマ:公共施設)
今年度の構想日本の『事業仕分け・住民協議会・施設仕分け実施一覧』詳細は、以下のURLよりご覧いただけます。
http://kosonippon.org/wp-manager/blog/?page_id=1079
《その他》
2016年4月~隔週月曜日 京都大学経済学研究科・経済学部 特殊講義「公共経営論1・2」 (代表 加藤秀樹)
公共政策の各論を毎回ゲストの講義で進めています。これまでのゲストは、
株式会社もり 代表 原野守弘氏、内閣府 迎賓館長 別府充彦氏、一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー 代表理事 田中未知子氏、長岡京市長 中小路健吾氏、厚木市こども未来部長 小瀬村寿美子氏、元朝日新聞社 代表取締役社長 木村伊量氏、財務省 事務次官 佐藤慎一氏、株式会社マイファーム 代表取締役社長 西辻一真氏(構想日本メルマガ「農業の現場あるあるシリーズ」執筆者)、日本ポリグル株式会社 代表取締役会長 小田兼利氏、外務省 アジア大洋州局南部アジア部長 梨田和也氏、金融庁 検査局長 三井秀範氏(金融庁長官から急遽変更)。
次回は、衆議院議員 岡田克也氏。
2016年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論」講義 (総括ディレクター伊藤伸)
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【3】<アーカイブ(過去の寄稿文)>
飯舘村をはじめ、まだ家に帰れない方々が13万4千人もいらっしゃいます。(復興庁調べ)
JIメールニュースNo.334 2008.1.25発行
【首長リレーエッセー(19) 村民の心、再発見塾でした】
福島県飯舘村長 菅野 典雄
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飯舘村と黛まどかさんとのお付き合いは、もう7年になります。
まどかさんは日本の俳句界に新境地を開きながら、一方で「日本の良さや素晴らしさを、もう一度見直す必要があるのでは」と多くの著名人と共に「日本再発見塾」なるものを毎年開いています。第3回目の「再発見塾」は、わが飯舘村でした。
「なぜ飯舘村?」
ですが、これまでの長いつながりもありますが、私たちが進めている「までいライフ」が、これからの日本にとってとても大切な考え方であり、「再発見」にふさわしいあり方・動き方ではないかということから選ばれたのでした。
“までい”とは、
私たち飯舘人が古くからなじんできた言葉で、「手間ひま惜しまず」「時間をかけて」「じっくりと」そんな心がこめられています。
全国から100人以上の方が集まる大会ゆえ、村にとっては対外的な事業としては、かつてない大事業でありました。
「までい」をただ村外に発信するだけに終わらせず、村にとっても村民にとっても「やって良かった」という事業にするために、周到な準備が必要でしたし、また、村民の方々の係わり合いが成功・不成功のカギでもありました。
2日間の中で、事業の要になっていただく村民の方や、90人程度の民泊を引き受けてくださった方々、そして事務局として活躍していただいた東京の事務局や慶應大学・福島大学の学生さんなど、総勢370人程度が関わり合った実に内容の濃い、村にとっては「やって良かった」の発見塾となりました。
そのことは、参加した方のアンケートが如実に物語っています。
アンケートを書いていただいた全員が「良かった(30%)」「大変良かった(70%)」との回答で、
「ご高齢の方を大切にし、古き良き頃の日本の家庭の中に仲間入りさせていただき、まるで前日まで全く未知な人間とは思えない程の忘れられない想い出となりました」
「地元のお年寄りの話は実に色んなことを考えさせられました」
「今の日本が抱えている問題を考える上で、たくさんのヒントをいただきました」
「までいな食事、までいの心、たくさんいただきました」
などなど、再発見した「までい」への感動の心を記してくれました。
また、民泊についても素晴らしい感想の言葉が書かれていました。
「一家総出で歓迎してくださり、旅館に泊まっては味わえない味がありました」
「民泊は地元の方々とのまでいな交流の場となり、とても良い思い出となりました」
「身も心も温まる一時でした。定年後は飯舘村に住んでみたくなりました」。
これらは民泊された方の声ですが、お別れの際にはテレビ番組『世界ウルルン滞在記』さながらに目元をウルウルさせた方も多くいらしたようです。
東京の事務局からも「民泊にこんなに素晴らしい感想を全員からもらえるなんて、とても信じられない」「飯舘村の人は素晴らしい、飯舘村でやってよかった」との話をいただきました。
村長としての私の名刺には「住む人の心が 村の顔です」と書いてありますが、「村の顔は観光地でも建物でも役場でもなく、村に住んでいる人の心が村の最高の資源であり、宝物ですよ」と言いたい訳です。私の理想以上に村民の方が、もうすでに「実践しているんだな」と改めて村民の素晴らしさに感動し、心からの感謝をささげた「日本再発見塾」でした。
さらに、村民の中にも、この塾の中で歩んできた自分の人生を語り習得した技術や心構えを発表したことが、多くの参加者の感動を呼んだことによって、自分の何の変哲もない人生を見直す機会になったようです。
ともすれば都会に比べ輝いていないと思いがちな田舎の暮らしの素晴らしさや偉大さを、都会から訪れた人たちとの交流の中で再認識したようであります。自分の歩んできた足跡に対する“誇り”の再発見です。その意味で村民にもかつてない新しい形の人づくりの手法を学ばせていただいた日本再発見塾でもありました。
私たち行政を進める者として、いかに村民の一人ひとりを主役にしていくことが大切かを教えられたことでもありました。
*菅野典雄(かんの・のりお)氏のプロフィール
1946年生まれ。1970年、帯広畜産大学卒業。1996年10月より現職。趣味は、カメラ、読書。飯舘村ホームページ : http://www.vill.iitate.fukushima.jp/index.html
≪ご参考≫
「日本再発見塾」ホームページ : http://www.e-janaika.com/juku/2007.html
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