- 【No.946】「にぎやかな過疎」とその横展開 ―農山村の地方創生― |明治大学 農学部 教授 小田切 徳美氏|
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構想日本メールマガジン【No.946】 2020.02.06 発行
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<目次>
【1】第255回J.I.フォーラム 2月10日(月)
「構想日本会員 懇談会」
【2】各地からの現場レポート
岡山県 津山市「津山自分ごと化会議」第4回
【3】今後の活動予定
千葉県 君津市「君津まちづくりプロジェクト」2月11日(火・祝)、3月7日(土)
【4】1月の主な活動報告 政策実現活動、新聞・テレビ等メディア掲載 その他
【5】巻末寄稿文
「にぎやかな過疎」とその横展開 ―農山村の地方創生―
明治大学 農学部 教授 小田切 徳美
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【1】第255回J.I.フォーラム
「構想日本 会員懇談会2020」
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これまでのJ.I.フォーラムゲストや、プロジェクト活動にご協力いただいている方にもご参加いただきます。
皆様と一緒に、大いに飲み、しゃべり、盛り上がり、2020年の日本を考えたいと思います。
◯日 時:2020年 2月10日(月) 19:00~21:00(開場18:30)
※開始時間にご留意ください。(入退室自由)
◯会 場:レストラン赤坂クーポール 本店(東京都港区赤坂1-1-14 野村不動産溜池ビルB1、TEL:03-3582-4035)
◯参加費 : 5,000円
◯定 員:50名(立食) まだ少し余裕があります
◯フォーラムの申し込み方法
⇒HPから申し込み:http://kosonippon.org/wp-manager/forum/regist.php
⇒メールをする:info@kosonippon.org
⇒Facebookイベントページの「参加」をクリック
https://www.facebook.com/events/609190753247546/
⇒電話をする:03-5275-5607
⇒FAX.をする:03-5275-5617
いずれかの方法で、お申し込みください。
☆参加ご希望の方は2月7日(金)13:00までに下記にご記入の上、FAX.他にてお申し込みください。
なお、キャンセルをされる場合は必ず7日(金)13:00までにご連絡ください。それ以降は、キャンセル料を頂戴致しますので、ご了承ください。
※構想日本会員様の会ではありますが、ゲストも大勢いらっしゃいます。折角の機会ですので、会員以外の方も皆様お誘い合わせの上、ご来場ください。
◯お問い合せは TEL 03-5275-5607
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【2】各地からの現場レポート
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津山市「津山自分ごと化会議」第4回(1/18)
テーマは「市営プールと学校プールのあり方」
提案書(案)は、4つの提案にまとまりました。
https://www.city.tsuyama.lg.jp/common/photo/free/files/12262/20200118_5.pdf
議論の一部をご紹介します。
「津山市に何が不足しているのか、子どもたちにアンケートするのがいいのではないか。」
「グラスハウスに使われている1億1千万円の費用対効果を、津山市民がどれくらい受けているのか考えることが必要。」
「昔は、祖父が牛を洗ったついでに水路で水泳を教えてくれていた。今、孫に水泳を教えようと思っても、教える場所がない。」
詳細はこちら → http://kosonippon.org/wp-manager/blog/?p=2971
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【3】今後の活動予定
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(1)千葉県 君津市「君津まちづくりプロジェクト」
★君津市「まちづくりプロジェクト」の特徴★
1.最大の特徴は「施設レビューと住民協議会を組み合わせた」試み。
2.「施設レビュー」で公共施設の課題整理、そこで出された論点を軸に「住民協議会」を実施。
3.「無作為に選ばれた3,000人のうち、応募のあった104名の市民」と「H29年度公共施設ワークショップに参加した34人のうち、応募のあった13名の市民」が参加。
【日 時】住民協議会 2月11日(火・祝)、3月 7日(土)13:00~16:00(予定)
【会 場】君津市役所 5階大会議室他(千葉県君津市2丁目13番地1)※会場に関する問い合わせ先:君津市経営改革推進課(電話:0439-56-1260)
【参加費】無料 どなたでも傍聴できます(事前登録不要、途中入退室可)
【主 催】君津市 詳細は、君津市HPをご覧ください。 https://www.city.kimitsu.lg.jp/soshiki/8/24788.html
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【4】1月の主な活動報告
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(1)政策実現活動
●住民協議会
1月11日,12日 千葉県 君津市「君津まちづくりプロジェクト(施設レビュー)」
1月18日 岡山県 津山市「津山自分ごと化会議(4)」
※その他、首長や自治体との打ち合わせ等 14件
(2)テレビ等メディア掲載
1月11日 市町村だより とみおか未来会議 子どもの遊び場 市長へ提案書 上毛新聞
1月15日 子どもの遊び場整備を 富岡・住民協 市に提案書提出 毎日新聞
1月21日 プール施設のあり方協議 津山自分ごと化会議 市長に来月提案書 津山朝日新聞
1月22日 自分ごと化会議が提言案 グラスハウス 20年度末に廃止を 山陽新聞
12月15日発行 1月15日号〈構想日本の “日本まるごと自分ごと化” 計画〉公共性を考える(第2089号)法律雑誌『時の法令』 (前回 未掲載のため)
1月15日発行 2月15日号〈構想日本の “日本まるごと自分ごと化” 計画〉選挙を自分ごと化する――1票のコストを考える(第2091号)法律雑誌『時の法令』
(3)その他
< 講義 >
2019年10月~隔週金曜日 京都大学経済学研究科・経済学部 特殊講義「公共経営論」(後期)(代表 加藤秀樹)
公共政策の各論を毎回ゲストの講義で進めます。
これまでのゲストは、東修平氏(四条畷市長)、山中光茂氏(しろひげ在宅診療所 院長、元松阪市長)、 東ちづる氏(女優、一般社団法人Get in touch理事長)、 藤田早苗氏(英国エセックス大学人権センターフェロー)、小澤いぶき氏(認定NPO法人PIECES 代表)、齋藤健氏(衆議院議員、元農林水産大臣)。
2019年9月~毎週木曜日 法政大学 法学部「NPO論II」(総括ディレクター 伊藤伸)
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【5】「にぎやかな過疎」とその横展開 ―農山村の地方創生―
明治大学 農学部 教授 小田切 徳美
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1.にぎやかな過疎―人口減・人材増―
地方部、特に過疎農山村や離島を中心に「にぎやかな過疎」と言える状況が生まれている。
人口データでは、高齢者の動向に起因する自然減が著しいために、その減少スピードは加速化している。ところが、小さいながら新たな動きが沢山起こり、なにかガヤガヤしている雰囲気が伝わってくる。
例えば、徳島県美波町。ここでは、移住促進のためのサポートが早くから行われていたが、そこにサテライトオフィスという形での若者による仕事の持ち込みが行われ、それを支援する会社が設立された。そのように移住した若者が地元の祭りをはじめとする各種の地域活動に参加する姿も見られる。また、複数の飲食店の新規開業も生じている。
同じような状況は、北海道ニセコ町、福島県三島町、愛知県東栄町、鳥取県智頭町、島根県邑南町、岡山県西粟倉村、山口県阿武町、同県周防大島町などにも見られる。
しかし、これは、現在注目されている移住者や関係人口だけが作りだしたものではない。やはり、中心となっているのは農山村の地元住民であり、それによる地域づくりが取り組みのコアに位置付いている。
つまり、この「にぎやかな過疎」のステージに立つプレイヤーは、
1)開かれた地域づくりに取り組む地元住民
2)地域で自ら「しごと」を作ろうとする移住者(その候補としての地域おこし協力隊)
3)何か地域に関われないかと動く関係人口
それに加えて、
4)これらの動きをサポートするNPOや大学
5)国連SDGsを意識して地域貢献活動を再度活発化しはじめた企業
もそれに加わる可能性もあろう。
こうした多彩なプレイヤーが交錯するのが「にぎやかな過疎」であり、その結果、人口減少は進むが、地域にいつも新しい動きがあり、人が人を呼ぶ、しごとがしごとを創るという好循環がいくつかの地域で見られるのである。
それは、「人口減・人材増」とも表現できる。
当然のことながら、このような動きはまだ少数派だろう。なかには住民が地域づくりに取り組めず、移住者や関係人口にもアピールすることもできない地域も多い。その結果、最近顕著なのが、同じような農山村間での格差の拡大である。都市部でも人口減少による停滞傾向が強いことを勘案すれば、従来の都市と農村間の格差(まち・むら格差)ではなく、地方圏、特に農山村同士の格差、「むら・むら格差」が生じているのであろう。
実は、この点が、最近の東京一極集中の背景にある。本来であれば、田園回帰の活発化は、一極集中トレンドの歯止めになり得るが、そうはなってはいない。それは、地方部でも格差があり、移住者を受け入れる地域と依然として住民が流出する地域の二極化が進んでいることが推測できる。こうした傾向は従来からも見られるが、特に最近では、先の「にぎやかな過疎」が一部で表面化しているなかで、それが顕著になってきたのである。
そのため、現在では、この「にぎやかな過疎」をどのようして横展開するかが問われている。今年から始まる地方創生の第2期対策の最大の課題のひとつは、この点にあるとしても過言ではない。
2.プロセス場面集-地方創生の横展開-
このような時に、いつも登場するのが「事例集」づくりである。それは「ノウハウの宝庫」であり、各地はそれを学び、実践すべきとされる。特に中央省庁では、このような視点から事例集づくりが盛んにおこなわれている。ところが、よく見れば、多くの事例集に掲載されているケースは、取り組みの内容や成果を紹介するものが多い。そこで示されているのは、「ノウハウ(How)」ではなく、むしろ「ノウワット(What)」である。
横展開を望む地域に必要なことは、取り組む住民の意識やきっかけ、事業プロセスなどの文字通り「ノウハウ」であるが、ところがそれを探そうとしても、意外なほど、その情報は少ない。多くの事例集がありながら、視察地選びにしか使われてないことが多いのはこのような背景がある。
この点は地方創生の横展開を考える際には重要な事実であろう。つまり、横展開が必要でありながら、実はそのためのツールが決して多くはない。求められているのは、それぞれの政策分野にかかわるプロセスを含めた事例集の作成とその蓄積である。
その一例を挙げておこう。現在では、農山村のみでなく、地域の持続化のために地域運営組織の設立は不可欠とさえ言える。それを立ち上げる際にはできるだけ多くの住民を巻き込むことが重要である。そのために必要なのは「地域のビジョンの明確化と共有」である。これが弱ければ、組織設立後、いつのまにか住民に「やらされ感」が強まり、活動が停滞することもある。そこで、地域と組織の将来像を住民にうまく伝えることが必要である。
その時、次のような事例の紹介の仕方は、簡素ながら、有効であろう。
<大分県宇佐市佐田地区>
地域住民が計画書を読んでもらいやすいように、住民の写真をふんだんに取り入れたデザイン・レイアウトとして、記入欄を設けるなどして『わがこと化』を促している。
(総務省『地域運営組織の形成及び持続的な運営関する調査研究報告書』※1)
このような事例が、「困りごと」ごとにまとめられているのが、求められている事例集のイメージである。上記の報告書は地域運営組織の設立に限定しているものの、それを意識して作成されている。
また、同一の様式で各地の地域づくりプロセスをまとめたものとしては、農林水産省「棚田優良事例集」※2があり、ここでもやはり、プロセス自体を、他の地域に伝えようとする意図が見られる。
こうした類いのものを、筆者は「プロセス場面集」と呼んでいる。それは、その「場面」を切り取るだけでなく、その後のプロセスの重要性を示すためでもある。横展開と同時に、他の事例との相互の学びあいの中で、プロセスの質を高めるためにも、このような事例集は欠かせないツールである。
もちろん、この「プロセス場面集」だけで地方創生の横展開が劇的に進み、「むらむら格差」が解消するものではない。しかし、このような事例集が、素朴に現場から求められていることも確かであろう。むしろ、今年から始まる地方創生第2期対策では、華々しい展開ではなく、小さいながらも、真に必要なことを、地域も政策サイドも着実に進めていくことが求められているのではないだろうか。
※1(総務省『地域運営組織の形成及び持続的な運営関する調査研究報告書』(2019年3月)https://www.soumu.go.jp/main_content/000607339.pdf)
※2農林水産省「棚田優良事例集」https://www.maff.go.jp/j/nousin/tanada/tanada.html#yuryo)
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小田切 徳美 (おだぎり とくみ)
神奈川県生まれ。農学博士。専門は農政学・農村政策論・地域ガバナンス論。東京大学農学部卒業後、高崎経済大学助教授、東京大学大学院助教授などを経て、現在、明治大学農学部教授。過疎や限界集落、農村問題の専門家として、国内外の農山村地域を歩き、集落から国の政策レベルまでの実態を研究し、政策提言を行っている。日本学術会議会員、日本地域政策学会会長。著書・編著に『農山村再生に挑む―理論から実践まで』(岩波書店)『地域再生のフロンティア』(農文協)、『農山村は消滅しない』(岩波新書)など多数。
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(編集後記)
東京都心を低空飛行で飛ぶ、羽田新ルートの試験飛行が始まりました。
「思った以上に低い所を飛んでいる。」「経済優先で本当に良いのか…。」
井戸端会議の結論「人任せにせず、政治に興味を持たないといけないね。」
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