【J.I.メールニュース ☆号外★】「昭和の近代建築はこれからの世界遺産 ~将来世代のために 私たちの手で守ろう~」|作家・日本ナショナルトラスト理事   森 まゆみ氏|
2016.02.19

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☆★ 号 外 ☆★

J.I.メールニュース  2016.02.19 発行

「昭和の近代建築はこれからの世界遺産

~将来世代のために 私たちの手で守ろう~」

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【1】<呼びかけ>

「昭和の近代建築はこれからの世界遺産

~将来世代のために 私たちの手で守ろう~」

作家・日本ナショナルトラスト理事    森 まゆみ

【2】<お知らせ>

(1) 第221回J.I.フォーラム  2月29日(月)開催

「 紛争、テロ、難民、その本質を考える そして、 私たち、日本、がするべきこと。出来ることを考える。」

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また日本の近代名建築が一つ壊されようとしています。

北九州市八幡地区の北九州市立八幡図書館です。

これは日本の代表的な近代建築家である村野藤吾の設計によるものです。
村野藤吾は、昭和時代を通して活躍し、ブルーノ・タウトからも高く評価されたと言われています。

一昨年、富岡製糸場がユネスコの世界文化遺産に登録されました。多くの人が世界遺産登録を渇望し、そして喜びました。今や日本中さらには世界から多くの人々が訪れる場所となっています。日本の近代建築の多くも、あと数十年経つと同じように扱われるのです。ところが、世界遺産登録を望む一方で、貴重な文化遺産を自ら壊しています。

森まゆみさんはじめ、北九州市立八幡図書館の保存に声をあげているのは国立競技場の問題を一貫して指摘し続けてきた女性たちが中心です。
この声が少しでも大きい輪になるように、手遅れにならないように読者のみなさんからも発信してください。
(代表 加藤秀樹)

【1】「昭和の近代建築はこれからの世界遺産

~将来世代のために 私たちの手で守ろう~」

作家・日本ナショナルトラスト理事    森 まゆみ

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私たちは空飛ぶ「たてもの応援団」です。

上野の奏楽堂や赤煉瓦の東京駅の保存運動に関わって以来、30年、東京での保存活用のほか、各地から「歴史ある建物を残したい」という声があれば、自費で飛んでいく建築家や弁護士、作家、デザイナーなどを含む自由な専門家集団です。

北九州市八幡に一目で村野藤吾作品が三作品見えるところがあります。そのような場所は他にはありません。

福岡ひびき信用金庫(1971)はこれからも大切にされそうですが、市民会館(1958)と図書館(1955)が壊されるかもしれないということで、見に行きました。

八幡は明治時代、官営八幡工場がつくられた日本近代化の大事な拠点です。現在新日鉄が持っている建物は世界遺産に選定されています。また村野藤吾は当時の守田道隆市長とともに、空襲にあった八幡の戦後復興のため駅前からの都市計画を構想し、そこに市民会館と図書館を配置しました。市民会館は今の所、まだ壊すまで猶予があるようです。

今回、図書館の隣の小学校が廃校になったのを受けて、その跡地に市民病院を作り、図書館はこの4月から撤去して病院の駐車場に組み入れるということです。しかし、この図書館は、鉱滓レンガという製鉄業からでるクズを用いて作った地産材の建物で、意匠にも村野藤吾らしさが表現され、ほぼ60年、市民に親しまれてきた建物です。

村野藤吾は辰野金吾ほどには知られていませんが、辰野と同じ佐賀県唐津出身、八幡で育ち、早稲田大学で建築を勉強しました。芸術院会員、文化勲章受章者でもあり、彼の作品は宇部市渡辺翁記念会館、広島の世界平和記念聖堂が重要文化財に指定されています。

そしてこれらの建物は画期的な戦後の都市計画の証言者としても重要で、近代化遺産と共にある建物群としても、八幡の貴重な観光資源でもあり、市民のプライドになっています。すでに建築学会からもこれらの建物の保存要望書は出ております。

このような建物を簡単に壊してよいものでしょうか?壊されたら二度とは建てることができません。

そこで私たちは、2月12日、北橋健治市長あてに、保存のお願いと、曳家などの保存手法の提案をいたしました。市長はその後の記者会見で、「図書館は非常に堅固に作られているので、曳家は難しい」と表明していますが、それほど堅固であるなら、それこそ病院施設と連携して、図書館でも、レストランやギャラリーなど別の形でも、大切な財産を残すことに知恵をしぼれないでしょうか?

病院も市民生活には不可欠な公共施設ですが、それと文化財が共存する道はきっとあると思います。

構想日本のメルマガの読者の皆さんにもこのことを知っていただきたく、筆をとりました。

各地で、歴史ある建物が無造作に壊されていきます。

そして残念ながら、日本の人件費は高く、工期に追われ、かつてのような手間のかかった素材やディテールを建築で実現することはできなくなりました。この図書館の窓やレンガの表情を見たら、これを壊すことがどんなに大きな損失かわかるでしょう。

参考資料

図書館全景 http://kosonippon.org/wp-manager/documents/2015/mail/20160219s1-3.jpg

村野藤吾作品 三作品 http://kosonippon.org/wp-manager/documents/2015/mail/20160219s2-3.jpg

市長への要望書 http://kosonippon.org/wp-manager/documents/2015/mail/20160219tegami.pdf

八幡図書館の移転整備計画(案)https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000689980.pdf

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森 まゆみ (もり まゆみ)

1954年東京都文京区動坂に生まれる。早稲田大学政経学部卒業、東京大学新聞研究所修了。出版社で企画、編集の仕事にたずさわった後、フリーに。地域雑誌『谷中・根津・千駄木』の編集人。不忍池の地下駐車場に反対し環境保全。赤れんがの東京駅ほか建築の保存・活用に携わる。著書に『東京遺産』『震災日録』『青鞜の冒険』『彰義隊遺聞』など。

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【2】(1)第221回J.I.フォーラム  2月29日(月)開催

「 紛争、テロ、難民、その本質を考える そして、 私たち、日本、がするべきこと。出来ることを考える。」

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◯日 時:平成28年2月29日(月)  18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

◯ゲスト:アブディン モハメド オマル Mohamed Omer Abdin(東京外国語大学 特任助教、スーダン出身)

瀬谷ルミ子(NPO法人日本紛争予防センター 理事長)

ナジーブ・エルカシュ(ジャーナリスト、シリア出身)

◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

◯主 催:構想日本

◯共 催:渥美国際交流財団

◯定 員:160名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

「頤和園(いわえん)溜池山王店」港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※フォーラムへのご参加は2月29日(月)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

お申し込みはこちらから http://kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php

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