2023.01.05
【代表コラム】2023年新年のご挨拶「長い目で、そして目の前の」
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新年おめでとうございます。

 

お正月にはお賽銭、お年玉などお金がつきものです。
だからというわけでもないのですが、少しお金の話を。
昨年の後半から、金利引上げ、円安、物価上昇などがたびたび話題になっています。
日本は、物価上昇率2%を目標に、ゼロ金利とか国債の日銀買入れなど、10年間あんなに無理しても達成できなかったことが、去年あっという間に「実現」しました。
その背景には世界中がコロナ対策で無制限といっていいくらいの景気刺激策をとったこと、加えてロシアのウクライナ侵攻で燃料や穀物の価格が急上昇したこと、日本の場合は、円安で輸入品の価格が高くなったことなどがあります。

 

お金の話はこのくらいにして、私がみなさんに一緒に考えていただきたいのは、ものごとを考える時間の長さです。
「出口戦略」という言葉を時々聞きます。
昨年末、黒田日銀総裁が、10年に及ぶ金融緩和の転換とみられる方針発表の会見において、これは「出口戦略ではない」と言いました。
出口戦略というのは、ある政策(例えば景気刺激)を採った場合、どこでそれを止めるか、どういうふうに転換していくかといったことです。
アメリカの金融当局などは、ある政策を始めた時(これが入り口)から出口戦略について言及することも珍しくありません。入り口には必ず出口を用意しておかないといけないという考えでしょう。長短両方の視点で政策を考える姿勢です。

 

一方、日本で出口戦略がきちんと議論されないのは二つの理由からではないかと私は思います。
一つは、出口=方針転換なので、出口に言及すると、これまで採ってきた政策や方針が否定される、あるいは間違っていたと言われるのを恐れている。
福島第一原発の事故までは事故の話はタブーだったという「無謬性神話」に通じるものです。
もう一つは、先のことを考えてない、あるいは考えたくない。
目の前の景気対策、政権維持、次の選挙…に追われてしまうのです。
朝令暮改を絵に描いたようなトランプ氏は特別としても、プーチン大統領や習近平国家主席のような長期政権を維持している人も含めて、世界のリーダーたちがこの意味で近視眼的になっています。
世の中が大きく動いているから人々は将来に何かの拠り所を求める。
政治は人気とり的にそれに小さく短く対応しようとするから、結局本当には人々の生活や気持ちには添えない。そんなミスマッチの繰り返しではないでしょうか。
出口状況は必ず来るのに、出口議論はしないから、いざという時に後追いになるのです。日本はその典型と言っていいと思います。
これでは戦闘は強いが戦略がないから敗ける、と言われた旧日本軍と同じです。

 

冒頭に述べたお金の話は、世界が直面している大きなうねり=地球環境を含めた社会の大転換が経済現象として短期的に噴き出してきたものでしょう。これに適切に対応するには、まず、大きいうねりがどういうものかよく見極め、長い眼で見た経済のあり方を考えたうえで目の前にある現象をこなすことが必要です。構想日本は、政権を担っているわけではないので長い眼でのものの見方に特に重きを置き、それをベースに今できることをする。つねにそれを心がけながら今年も活動していきます。

 

みなさまにとって今年が良い年になりますように、そして構想日本がささやかでもそのお役に立てるよう、スタッフ一同今年も一生懸命働きたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。